長年の表記、今でも イロハニの地名 【千葉地理学会連載 おもしろ半島 ちばの地理再発見】

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 佐原高校の住所は「千葉県香取市」「佐原」「イ」の「2685」です。電話で先方に伝えると、「い?」ですか?と問い返されることがよくあります。「イ」「ロ」「ハ」「ニ」「ホ」などで示された住所表記を見て驚く人も多いことでしょう。

 これらの住所は、県内では旭市・香取市・山武市・匝瑳市・八街市・東庄町などにみられます。

 『角川日本地名大辞典』によれば、旭市では、1889(明治22)年に合併した当時の網戸村がイに、以下同じく成田村がロに、十日市場村がハに、大田村がニとそれぞれの大字名が変更されました。

 匝瑳市でも同様に、平成の合併前の旧八日市場市の市街地において、もとの八日市場村がイになり、同じく富谷村がロに、籠部田村がハに、下富谷村がニの大字名に変更されました。

 八街の市名は、いわゆる「東京新田」として、明治政府の政策により8番目に開拓されたことが地名の由来とされています。旧八街村は1872(明治5)年に誕生しましたが、『八街市史研究』創刊号によれば、当時の開墾会社ごとにその所有地に「いろはにほ」の地名がつけられ、その後編入された小間子村が「ヘ」とつけられました。これらは、八街市の中心市街地を中心として西方に位置する「い」を起点として、時計回りに配されています。

 なお、過去には存在したのに現在は使用されていない自治体もあります。いずれも明治の大合併時から採用された銚子市と鋸南町では、それぞれ1934(昭和9)年、55(昭和30)年に現在の漢字による字名に変更されています。

 このような住所名は全国でも千葉県に特有な例だといわれています。昭和や平成の大合併時にも住居表示の見直しが検討されたといいますが、長年使い慣れた表記が今日でも採用されているのです。地元の人たちによれば、ロ(ろ)を口(くち)に間違われたり、ニ(に)とニ(2)、ハ(は)と八(8)を混同されたりすることもよくあるそうです。

 初めての方はこのような間違いにご用心を!

 (千葉県立佐原高校 石毛一郎)