磯遊びで最初に見つけられる魚 アゴハゼ 【海の紳士録】

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 潮がひいた磯には、海から取り残されてできた水たまりがいくつも見られる。これを潮だまり(またはタイドプール)という。潮だまりをそっとのぞくと、ふだんは海の中にいて見ることができない魚たちの姿を間近に観察することができる。

 南房総の海へ磯遊びに出かけて、潮だまりで最初に見つけられる魚はアゴハゼであろう。アゴハゼは北海道から鹿児島まで広く分布し、全国の潮だまりでごくふつうに見られるハゼ科の一種である。

 アゴハゼの子どもは春先に誕生する。この頃に潮だまりをのぞくと、体にまだ透明な部分が多い幼魚を見つけることができる。この幼魚は海底から離れたところで生活し、数十から数百尾の群れを形成している。それをたも網ですくうと、一度にたくさんの幼魚を捕まえることができる。そうしたら、透明な容器に移して、横から観察してみるとよい。大きな幼魚ほど体に黒い部分が多いことがわかるだろう。成長に伴い、次第に体色が濃くなっていくのである。

 夏になると、ほとんどのアゴハゼは海底で生活をしている。体色は地味な灰色であるが、まわりの環境によって濃くなったり薄くなったりする。

 冬になると成熟して産卵を行う。フィールドでの詳しい生態はよくわかっていないが、転石の下に巣を作って子育てをするようである。わが子の誕生を見とどけた後、アゴハゼは短い一生を終えるのである。

 (千葉県立中央博物館分館海の博物館川瀬裕司)