飯岡土人形復刻へ 住民ら粘土作り、型抜き 完成品、文芸賞「海へ」の副賞に 【地方発ワイド】

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 東日本大震災で甚大な津波被害を受けた旭市飯岡地区で、かつて作られていた粘土の人形「飯岡土人形」を地域住民らの手で復刻させる取り組みが始まった。もとになった東京・浅草の今戸人形(古型)の再現に取り組む吉田義和さん(54)=東京・北区=が協力し、型を作成。復興と発展を目指す地元のNPO法人「光と風」が、粘土作りや型抜きに挑戦している。

 完成品は、飯岡出身の詩人・高橋順子さんを審査委員長とする初開催の文芸賞「旭いいおか文芸賞『海へ』」(実行委員会主催)の上位入賞者に、副賞として贈呈する予定だ。

 (銚子・海匝支局 田村理)

◆津波で型流される
 飯岡土人形は、長南町に伝わる県指定伝統的工芸品「芝原人形」と同様に、浅草の今戸人形がもとになっている。明治時代から太平洋戦争の頃にかけて、かつて飯岡で荒物屋を営み、現在は家具チェーン店に業態を変えた「あまさけや」の一家が節句人形などを作り、売っていたという。

 2011年、東日本大震災の津波で本店(飯岡店)が被災し、保管していた土人形の型などが流された。あまさけやに残されているのは、同市中心市街地の旭店にある一対の裃雛(かみしもびな)と、昔の写真。あまさけやの武多和フクさん(84)=同市=は「津波で流される前から、もう作る人は現れないと思っていた。人形を復刻させると聞いて驚いたが、大変良いことだと思う」と目を細める。

◆地元の粘土使用
 復刻のきっかけは文芸賞。初開催の文芸賞に全国から応募があり、実行委員会の関係者が「心の通った地元の産品を副賞にしたい」と思い立った。実行委員会とメンバーがかぶっている同NPOが土人形作りを担うことになり、吉田さんに協力を求めた。

 飯岡歴史民俗資料館(同市)には被災を免れた土人形と型が展示されているが、型を作る作業には直接活用できなかった。依頼を引き受けた吉田さんは、独自に型を作った。

 同NPOはカベト土と呼ばれる地元の泥岩を地権者の了解を得て採取し、粘土を作った。1月末には吉田さんの指導を受けながら、裃雛35対(計70体)の型抜き作業を行った。今後、完全に乾燥させた上で焼き上げ、明治・大正時代の製法に基づいて絵付けを行うという。吉田さんは「自分の活動が、少しでも復興やまちづくりに役に立っているのであればうれしい」と話した。

◆地域産品も検討へ
 飯岡土人形は、文芸賞の上位入賞者に渡すことになっている。同NPOは本審査会が開かれる3月4日に向け、作業を進めている。

 渡辺義美理事長は「完成後も、来年の文芸賞の副賞とするため、また作りたい」としている。一方、津波による被災を乗り越え復刻される郷土の土人形には、今後の活用にも注目が集まる。渡辺理事長は「要望があれば来年度以降、地域産品として復活させることも検討していきたい」と意欲を述べた。