牡蠣の毛? ケガキ 【海の紳士録】

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 ケガキは、食用としておなじみのマガキと同じ、イタボガキ科の二枚貝の一種である。波静かな内湾にくらすマガキに対し、ケガキは波の強い磯にくらし、よりきれいな水を好むようである。潮間帯の上部から中部にかけて、一面に群生している場合もある。殻高5センチ程度の大きさで、マガキと比べると小型である。養殖マガキのように衛生管理されているわけではなく、普通食用にはしない。

 外見上の特徴は、殻の表面に管状の黒い突起がたくさんある事である。このため「毛牡蠣」と名付けられたのだろうが、石灰質で固い突起は、「毛」というよりは「棘」である。大型の個体では、この突起は摩耗してなくなってしまうこともある。

 ケガキの「毛」は何のためにあるのだろうか。表面積を大きくすることによって熱を逃がす役割をしているという説もあるが、捕食者に襲われにくいように身を守っているという説が有力なようである。「毛」を除去したケガキは、肉食性の貝に食べられやすくなるそうである。

 磯では、岩や貝などで思わぬ怪我をすることがある。中でも、ケガキがびっしり付いている所では転びたくないものである。しかし、この「毛」は、捕食者からの防御や、人に擦り傷を作る事には有効であっても、人に踏まれる事には耐えられない。人がたくさん踏みつける場所では、「毛」がなくなりやすいようである。何気ない我々の一歩が、ケガキのくらしに大きな影響を与えるのかもしれない。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 村田明久)