スガイがお好き カイゴロモ 【海の紳士録】

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 房総半島周辺の磯でよく見かける小型の巻貝にスガイという種類がある。地元の人たちからは「磯玉」などと呼ばれて、ゆでたものが食用とされている。このスガイの殻をよく見てみると、どれも緑色のコケのようなものが付いている。ほんの一部に付いているものもあれば、緑のじゅうたんのように殻を覆っているものもあるが、とにかく必ず付いている。この緑色のコケのようなものが、カイゴロモという海藻である。

 カイゴロモは高さが1ミリくらいにしかならない小さな海藻で、本州から沖縄まで広く分布する。拡大してみると多数枝分かれした体を持っている。このカイゴロモ、スガイの殻の上でしか見つかっていない。しかも死んでしばらくたった後のスガイの殻には見られない。どうも生きたスガイの殻のみに付くようである。しかも前述のように生きたスガイの殻には必ずカイゴロモが見られる。不思議に思った研究者が各地からたくさんのスガイを集めてみたところ、生きたスガイでカイゴロモが付いていなかったのは1か所の20個体のみだったそうだ。

 おそらくカイゴロモとスガイの間にはお互いに切っても切れない密接な関係があるのだろうと想像されるが、いったいどのような関係なのだろう。サンゴのように体内の共生藻から栄養をもらって育つ生きものもあるが、殻の外側に付くカイゴロモがスガイに栄養を与えているとは考えにくい。今のところその関係はまだ謎だらけである。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 菊地則雄)