前に歩くカニ マメコブシガニ 【海の紳士録】

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 潮が引くと一面の砂泥が広がる干潟は、潮干狩り等でおなじみの場所である。一見するとあまり生きものがいないように思われるかもしれないが、実は多くの生きものたちが砂泥の中に隠れている。干潟にくらすカニの多くは、巣穴を掘ってくらしており、身の危険を感じると素早く隠れてしまう。

 しかし、干潟の上をのっそりと歩いている風変わりなカニを見かけることがある。直径2センチ程度の丸っこい甲羅に、不釣り合いに長いハサミ脚をもち、ユーモラスな姿をしている。これがマメコブシガニである。砂泥に浅く潜っていることも多いのだが、ひたひたに水がたまったような場所でのんびりしている姿が目に付く。行動も少し変わっていて、カニといえば普通は横に歩くものだが、マメコブシガニは前に歩くことができる。捕まえて手にとってみると、死んだふりなのか、ハサミを広げてじっと動かなくなる。

 また、1匹がもう1匹を抱いている姿もよく見かけ、仲むつまじいカップルのようにも見える。これは、抱いている方がオスで、メスが交尾できるタイミングになるまで、別のオスにとられないようにしているのである。オス同士がけんかしてメスを取り合うことも多い。オスがメスをガードする行動は、甲殻類にはしばしば見られるのだが、マメコブシガニでは観察が容易である。干潟に行ったら、ぜひこのユーモラスなカニを探してみてほしい。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 村田明久)