ロープ型の動物の上で暮らす ムチカラマツエビ 【海の紳士録】

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 房総半島以南の日本の暖温帯域から太平洋の熱帯域にかけてのやや深い海底には、ムチカラマツというサンゴやイソギンチャクに近縁の刺胞動物(しほうどうぶつ)が生息している。ムチカラマツは、長さ2メートルに達する1本のロープのような軸に、無数のポリプがつらなって群体を形成している。軸は黒く、ポリプは黄色いため、遠目には黄色いロープのように見える。

 一般にはほとんど無名の動物だが、ダイビングをする人には馴染み深い。なぜなら、ムチカラマツに着生して暮らす魚や甲殻類がおり、「共生」という生物の暮らしを海中で観察するのに適した動物のひとつだからである。

 ムチカラマツと共生する動物の中に、その名もずばりムチカラマツエビという名のエビがいる。このエビは、体長1センチほどのずんぐりした体つきで、淡灰色の地に淡黄色の幅広い横縞が入るという色彩を呈する。この体型や色彩は、ムチカラマツの上でじっとしていると、背景となる軸やポリプに溶け込むが、他の環境では用をなさない。つまり、ムチカラマツの上で生活するのに特化しており、エビの側から見ると必須の共生関係にあると考えられる。このエビの分布域は共生相手であるムチカラマツとほぼ同じであり、千葉県では館山や鴨川から見つかっている。

 海の博物館では、20日(土)から「海の生きものの共生」という企画展示を開催している。その中では、ダイビングをしないと実物を見る機会のないムチカラマツエビとその宿主のムチカラマツを標本と写真で展示している。この機会にぜひご覧いただきたい。(千葉県立中央博物館分館海の博物館奥野淳兒)