温帯域分布のイシサンゴ エダミドリイシ 【海の紳士録】

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 ミドリイシという名前を聞いてサンゴの仲間を思い浮かべる人はどれくらいいるだろう。実は「イシ」というのは石灰質の硬い骨格を持つイシサンゴの仲間によく使われる名前である。ミドリイシの他にもクサビライシやキクメイシなどの名を持つサンゴがいる。生時は骨格の表面を柔らかい体で被うが、死ぬと白い石のような骨格だけが残る。ミドリイシやキクメイシなどのいわゆる造礁サンゴは熱帯地方に多く、沖縄などには非常に多くの種類が分布する。温帯には種数が少なく、日本の太平洋岸では千葉県が分布の北限である。

 エダミドリイシは本州中部から九州にかけての黒潮の影響を受ける地域で見られるイシサンゴである。千葉県では館山市や鋸南町に生息することが知られている。沖縄には分布せず、どうやら温帯域に適応した種類らしい。しかし、不思議なことにこのエダミドリイシは香港からも記録がある。なぜ沖縄を飛び越えて香港に分布するのかはこれまで謎とされていた。

 ところが、最近香港でサンゴの調査した日本の研究者によると、香港にいるのは日本のエダミドリイシとはどうやら別の種類らしい。これで分布の謎は解決できそうだが、今度は新たな課題が表れた。エダミドリイシの学名(世界共通の名前)は、もともとは香港の種類に付けられたものであるため、日本のエダミドリイシに適用できる学名があるかどうか、過去の研究を慎重に調べ直さなければならなくなったのである。

 (千葉県立中央博物館分館海の博物館立川浩之)