「ハ」の字模様が特徴 ヒメソバガラガニ 【海の紳士録】

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 海の博物館が開館してからこれまでの10年間、少なくとも年に1回、私は博物館前の磯でエビやヤドカリ、カニなど十脚甲殻類の観察会を行ってきた。磯で見られる十脚甲殻類と言っても、その種類はとても多い。これまでにこの磯だけでも実に60種を超えるエビやカニが見つかっている。

 観察会では、参加者自らがエビやカニを探す自由時間を設け、見つかった個体を容器に入れて並べ、即席の「エビ・カニミニ水族館」を作ってそれぞれの種類の説明をする、というメニューを組み込んでいる。短時間でそこそこの数が集まるので、「磯のエビ・カニの種多様性」を実感していただけているようである。

 毎回、必ず誰かしらがつかまえてくるのが、今回紹介するヒメソバガラガニである。脚を広げた幅は1センチと小さいが、これでも立派に成熟した大きさである。肉眼では、甲はほぼ円形に見え、そこから細いハサミや脚が生えている。全体的に褐色で、ハサミや脚の先端は白い。外観はズワイガニやタカアシガニなどのクモガニの仲間に似ているが、ヤワラガニ科という異なったグループに属する。

 このカニの特徴は、甲の背面にある白い「ハ」の字型に並んだ円紋である。個体によっては、この紋がはっきりしないものもいる。ヒメソバガラガニが暮らしているのは、潮だまりに転がる石の裏側である。石をめくると、びっくりしてその裏側を動き回る小動物の中にこのカニが含まれていることが多い。

 さらに、白い「ハ」の字が目に飛び込んでくるからだろうか、小さなカニではあるが誰にでも見つけやすいようである。初夏の頃には個体数が多いせいか、ほぼ確実に見つけることができる。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 奥野淳兒)