古くから知られた海藻 ミル 【海の紳士録】

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 「ミルという海藻をご存知ですか?」と聞かれて知っているという人はよほどの海藻通だろう。ミルは緑藻の一種で、日本全国のみならず世界中に広く分布する。その名の語源は不明であるが、古くから知られる名だという。

 現在ではあまり利用されないミルだが、実は701年に制定された大宝律令に朝廷に納める税のひとつとして「海松(みる)」が記されているほどである。また、万葉集にもその名が見られる。古代の人々はミルを利用し、歌にまで詠んでいるのである。

 古代の人々はまた、「海松色」という名前の色名も使用した。これはややくすんだ黒みがかったような緑である。ミルはやや黒みがかった緑色をしており、それから付けられた色名である。このミルの色は、体に持っている特定の色素によって発色される独特の色であり、古代の人々は陸上植物の葉の緑色とは異なるミルの黒ずんだ緑色を識別していたのである。

 現在ではあまり利用されない、と書いたが、確かに日本では一部の地域を除いて食用とはされていない。しかし韓国ではキムチに入れる地域があるそうだし、フィリピンなどでもサラダ風に食べられているらしい。また、現在でも神饌(しんせん)としては欠くことのできない海藻であり、例えば伊勢神宮の神嘗祭(かんなめさい)や宮中の各種祭礼などでは海藻のひとつにミルが用いられる。現在でも日本の文化に深く関係する海藻なのである。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 菊地則雄)