ふしぎな岬の物語 快挙に沸くモデルの地 モントリオール映画祭特別GP

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エキストラとして出演した地元住民と写真に納まる吉永さん(中央)ら=今年3月、南房総市和田町
エキストラとして出演した地元住民と写真に納まる吉永さん(中央)ら=今年3月、南房総市和田町
「海の眺めが一番のごちそう」と話す玉木さん=2日午後、鋸南町の喫茶店「岬」
「海の眺めが一番のごちそう」と話す玉木さん=2日午後、鋸南町の喫茶店「岬」

 モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリを受賞した、吉永小百合さん主演の「ふしぎな岬の物語」は鋸南町に実在するカフェを舞台に、房総半島の美しい景観が登場し、多数の地元住民がエキストラ出演するなど、千葉の魅力が詰まった作品だ。吉報に地元や関係者には祝福と期待が広がった。

 映画の舞台「岬カフェ」のモデルは、海の向こうに富士山を望む鋸南町元名の明鐘岬(みょうがねみさき)の突端にある、1978年創業の老舗喫茶店「岬」(玉木節子さん経営)。

 映画では、カフェ店主の柏木悦子(吉永小百合)、おいの柏木浩司(阿部寛)、常連客の娘の竜崎みどり(竹内結子)、不動産屋で悦子や浩司を見守ってきたタニさん(笑福亭鶴瓶)らの人間模様が描かれ、「昔懐かしい、温かいほわほわした雰囲気」(成島監督)の作品という。

 同町ほか、館山ファミリーパーク、いすみ鉄道上総中野駅、勝浦漁港など房総半島の美しい景観がロケ地となった。3月には沿岸捕鯨基地でもある南房総市・和田漁港で、鯨の祭りシーンが撮影され、エキストラの地元の小学生、住民らが法被姿で俳優陣と“共演”を果たした。

 吉永さん演じる女店主のモデルとなった玉木さんは2日、「知人からの祝福の電話が鳴りっぱなし」とうれしい悲鳴を上げた。

 もともと、両親が営んでいた食堂があった場所。3年前の1月には火事で全焼したが、常連客の家具職人の協力でその年の12月には再開。鋸山の湧き水でいれるコーヒーと音楽、海の眺望が自慢で、「眺めや音楽で日頃の嫌なことを洗い流していってほしいと思っている」。

 受賞には「一滴の無駄もない素晴らしい出来だったから納得。成島監督や吉永さんに『ありがとう』と伝えたい」と感謝した。

 原作「虹の岬の喫茶店」(幻冬舎文庫)の作者、森沢明夫さん(44)は船橋市出身・在住で、高倉健さん主演の映画「あなたへ」の小説版などを手がける注目の作家。「岬カフェ」には「日本中の海岸線を旅し、エッセーを書いていた時に出会い、富士山も望むことができ、最高のコーヒーを味わったことが忘れられず、ここを風景に作品を作ってみようと思った」という。吉報はメールで知り「県内の美しい風景や、温かい人間模様が詰まった作品。それが海外でも評価され、県民としてとても喜ばしい」と話した。

 映画に出演し、江戸時代から鋸南町に伝わる鯨唄を披露した鯨唄愛好会の舟宝(ふなとみ)康行会長(66)は「受賞は素晴らしいこと。鯨唄や鋸南町を多くの人に知ってもらうきっかけになればうれしい。映画のため半年間練習を続けてきたメンバーと映画を見に行きたい」と話した。

 また白石治和・鋸南町長(67)は「町を舞台に撮影された映画が世界的な賞を受賞されたことは町にとっても名誉なこと。『岬』はロマンあふれる場所であり、多くの方が訪れて、都会と町を、人と人を結びつけてくれることを期待する」とコメントした。

 3月に撮影現場を激励に訪れ、45年ぶりに吉永さんと再会し感謝の花束を手渡した森田健作知事は2日、「本県にゆかりが深い映画が国際的な映画祭で受賞したことは大変うれしく思う。映画を通じ、千葉県の魅力が多くの方に伝わることを願っている」とお祝いのコメントを寄せた。