貝殻を持つウミウシ ミスガイ 【海の紳士録】

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 ウミウシはスクーバダイビングの愛好者たちに人気のある生きもので、近年、たくさんのガイドブックや写真集が出版されている。いろいろな色や形を持ったウミウシは写真を眺めているだけでも楽しいが、多くの種類が掲載されている写真集を注意して見ると、中には貝殻を持ったウミウシもいるのに気付く。ウミウシは巻貝の仲間でありながら、多くの種類が貝殻を持たないが、中には立派な貝殻のある種類も含まれているのである。

 ミスガイは、そんな貝殻を持ったウミウシの一員である。体(軟体部)は紫がかったピンク色で、大きく波打つ体は青白く縁取られている。水中でひらひらと揺れる柔らかい体はいかにもウミウシのものであるが、背中の真ん中にはよく目立つ殻がある。殻は卵形で、表面には細かいしま模様がある。ミスガイの名は、このしま模様を御簾(みす)に見立てて付けられたものである。立派な殻ではあるが、殻の大きさの割に体の方が大きいため、体を完全に殻の中に収めることはできない。

 ミスガイは浅い海でのダイビングでも観察できるが、むしろ潮の引いた磯の潮だまりで眼にすることの方が多い。特に、底に砂のたまった潮だまりの砂の中を探すとよく見つかる。ミスガイは、砂の中に住むミズヒキゴカイというゴカイの一種を専門に食べるので、ミズヒキゴカイの住む砂の中でよく見られるわけである。

 十分に成長した個体では、殻の長さは5センチほどになる。薄く壊れやすい殻であるが、海岸に打ち上げられた殻が見つかることも少なくない。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 立川浩之)