千葉ラーメンの達人たち

■プロフィール
山路 力也(やまじ・りきや)
フードジャーナリスト・千葉拉麺通信主宰。著書にラーメンマップ千葉6など多数。千葉市在住。


洋食の技法で優しい味わい いなばのしろうさぎ(君津市南子安)

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 君津市のラーメンシーンを俯瞰(ふかん)してみると、地元で人気を集めている味は富津を中心にした内房特有の真っ黒い醤油(しょうゆ)ラーメンか、製鉄所と共に九州から渡って来た豚骨ラーメンの二系統に大別されるが、そのどちらにも当てはまらないオリジナルの味で勝負し続けている佳店が「いなばのしろうさぎ」である。

 店主の義崎眞生さんは洋食の世界で腕を磨き、その後長い間弁当惣菜店を営んでいたが、ラーメン作りに没頭するようになり洋食の技法を用いて極上のスープを作り上げた。店主自ら「命のスープ」と名付ける自慢のスープは、房総産の地鶏のガラを中心に、厳選された食材を使って弱火でじっくり煮込むことなんと60時間。フレンチの「フォン」の要領で、骨を一度オーブンで焼き上げてからスープを取るなど、素材に対して最適な調理法を用いて、うま味を引き出した。そして弁当店の片隅のカウンターで客に提供したところ、専門店顔負けの味に誰もが驚き、ついにはラーメン店としてリニューアルするまでに至った。

 地元房総産の食材を積極的に使い、素材本来が持つ力を引き出したメニューの数々は、調味料を排したり油分を省いたりなど、既存のラーメンとは一線を画する大胆なアプローチで作られるものばかり。他にも、じっくり丁寧に取ったフォンと2日かけて炒めたタマネギで作られる「フォンドヴォーカレー」や、水で時間をかけて抽出した「水出しコーヒー」など、料理に一切の妥協をせず徹底的に手間暇をかける店主の誠実さは、この店のメニューを食べれば誰もが分かるはずだ。

 【交通】JR内房線君津駅より徒歩30分。電話0439(54)4810。