千葉ラーメンの達人たち

■プロフィール
山路 力也(やまじ・りきや)
フードジャーナリスト・千葉拉麺通信主宰。著書にラーメンマップ千葉6など多数。千葉市在住。


甘み広がる背脂ラーメン 旨みこってりらーめん鐵TETSU(千葉市中央区)

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 ラーメンに「背脂(せあぶら)」を最初に浮かべたのは東京の屋台ラーメン店という説があるが、それはラーメン史においても実に画期的なことであった。鶏ガラや豚骨などから出た自然な油分しか蓄えていなかった従来のラーメンスープに、意図的に油分を加えるという大胆な発想。こうすることであっさりとしたスープに深いコクを与え、さらに固形である豚の背脂を浮かべることで、麺とスープがより絡むようにもなったのだ。

 蘇我にある「鐵」はそんな背脂ラーメンの専門店。背脂ラーメンの嚆矢(こうし)とされる老舗店の流れを汲んだ、千葉の名店「なりたけ」で修業を重ねた店主の館市徹也さんは、人気の背脂ラーメンにさらなる魅力と可能性を感じ、あらためて真正面から背脂ラーメンと向き合って味創りに取り組んだ。味の核となる背脂は温度や形状なども改良を重ね、さらにこれまでのラーメン店ではあまり取り扱わなかった特級品の背脂を使用した。スープと麺をすするごとに背脂のプリプリとした食感と優しい甘みが口の中いっぱいに広がる。従来の背脂ラーメンで感じたようなしつこさやベタつき感はなく、それでいてしっかりと存在感がある。この店では背脂の量を選ぶことが出来るが、一番量の多い「ギタギタ」でもさほどくどさを感じないのは、良質でていねいに処理されているところにあるのだろう。

 オープン後着実に人気を呼んで、今では県内有数の行列店になった鐵。それでも日々の味への取り組みは弛むことがなく、麺の美味しさをより向上させるために国産小麦の麺作りに着手。2年前には店舗を拡張して製麺室を併設し、念願の自家製麺化を果たした。また今年7月には千葉市内に待望の2号店も開業。世の流行に流されることなく、あくまでも背脂ラーメン一本で歩み続ける姿勢は揺るぐ事がないのだ。

 【交通】JR線蘇我駅より徒歩5分。電話043(261)8663