千葉ラーメンの達人たち

■プロフィール
山路 力也(やまじ・りきや)
フードジャーナリスト・千葉拉麺通信主宰。著書にラーメンマップ千葉6など多数。千葉市在住。


漢方素材が複雑に香る一杯 支那そばへいきち(旭市ハ)

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 ラーメンは日本オリジナルの麺料理であるが、その源流が中国料理にあることに異論を挟む人はいないだろう。中国生まれの日本育ちと言ってもいいラーメンは、百年の歴史の中で独自の進化を遂げて現在に至っている。和の食材を使ったり、フレンチの技法を用いたり、既存の料理のジャンルを超えたものがラーメンである。ならば、源流の中国料理を取り入れたラーメンがあっても決しておかしくない。旭市にある「へいきち」は漢方素材を取り入れたラーメンを提供して人気を博している店だ。

 店主の山口明夫さんは、仕事で行った中国で出逢った麺の美味しさを再現したいという思いから、三重県でラーメン店を開業した。雑誌やインターネットなどで話題になり一躍人気店へ。そして2011年、山口さんの故郷である旭市に凱旋出店を果たした。トッピングやサイドメニューはもちろん、チャーシュー麺すらなく、メニューは「支那そば」のみという潔さ。麺は山口さんが中国で出逢った麺に近いものを特注し、名古屋から取り寄せる。細麺と極細麺の二種類が用意されているが、お勧めは繊細なスープをしっかり拾い上げる極細麺。鶏ガラをベースにした澄明なスープには、八角や丁字、桂皮など数種類の漢方素材が溶け込んでおり、さらに中国の魚醤である「魚露」を加えることで、ほのかな甘さとすっきりしていながら複雑で重層的な奥深い味わいになっている。

 日本人なら食べれば誰もが懐かしさを感じるノスタルジックなラーメンでありながら、漢方素材など中国で長年使われてきた素材の独特な風味が調和していることに驚かされる。食べたことがあるようでいて、誰も食べたことのないオリジナリティを表現することこそ一番難しいことなのだ。

 【交通】JR線旭駅より徒歩20分。電話0479(62)4223。