御木平輔のミュージカルランド

■プロフィール
 御木平輔(みき・へいすけ) 音楽専門誌「ミュージックフォーラム」編集代表。主な著書は『ミュージカル手帳』(心交社)、「宝塚歌劇名作・傑作全演目事典平成編(講談社)、「新ミュージカル手帳」(心交社)、「ひばり模様」(七賢出版)など多数。南房総市千倉町のかやぶき屋根の家に住んでいる。


時代映すブラックユーモア シカゴ(TBS/キョードー東京/梅田芸術劇場) 世界初オール女性キャスト

  • 0
  • LINEで送る

中央左がロキシー役のひとり、朝海ひかる。いい意味でのいかがわしさが垣間見れた。その右がビリー役のひとり、姿月あさと。端正な中に悪徳の香りがほのかに… 撮影:宮川舞子
中央がヴェルマ役のひとり、湖月わたる。ダンスのキレとふてぶてしい笑いが印象的 撮影:宮川舞子

 殺人者がスターに!? 信じられない実話を土台にしたブラックユーモア満載のブロードウェーミュージカル「シカゴ」(作曲‥ジョン・カンダー作詞‥フレッド・エッブ1975年初演版演出・振付‥ボブ・フォッシー)は時代を映す鏡だ。観るたびに驚きと発見がある。しかも今演の宝塚歌劇百周年記念OG版(96年再演版がベース)はすべて女性が演じる世界初の試みなので、驚きと発見も倍加する。「清く正しく美しく、朗らかに」の宝塚スピリッツに、殺人、暴力、賄賂、不倫…と悪の要素が複雑に絡み合うのだ。一見、真逆の組み合わせが不思議な化学反応を醸し出すから見逃せない。東京凱旋公演はもうすぐ。観てのお楽しみだ!!

 ≪20年代、シカゴの刑務所。夫殺しのヴェルマは牢名主的存在だ。そこに愛人殺しのロキシーが投獄される。互いに張り合うが、結局は悪徳弁護士ビリーと手を組み無罪をゲット、二人はスターの階段を昇ってゆく。≫

 スキャンダラスな内容とは打って変わって舞台はシックでシンプル。黒ずくめの衣装が印象的だ。特に今演は男性役が帽子を被っているのが特徴。見どころはやはりフォッシースタイルと呼ばれる独特のフォルムだ。フォッシーは身体的コンプレックスを逆手にとり、背を丸めたガニ股を踊りの主流とした。その上、手足の動きが不揃いだから厄介この上ない。つまり踊り手の熱量を体の外側へ放出するのではなく、体の内側へと封じ込める独特な振付なのだ。スタイル抜群の元タカラジェンヌにとっては苦痛の種だが、実に洗練されたフォルムになっていた。

 さすがだ。この不自然で奇妙なフォルムのうごめきが、今まで見たこともないセクシーさを醸し出していたのには驚いた。もちろん男女混合版のような猥雑でエネルギッシュな雰囲気はないが、逆に性差を超えた赤裸々な人間性が垣間見えたことは大きな発見だ。

 注目のシーンは、ヴェルマを含め6人の女囚たちがそれぞれの殺人を告白する♪『監獄タンゴ』の迫力、ヴェルマと看守の♪『クラス』では、「~品がない~」というアンニュイなくり返しフレーズが耳に残る。また、ロキシーとヴェルマがラストに歌う♪『NOWADAYS(この頃は)』も聴きどころ満載だ。

 さて、主要キャストはトリプルで、考えられない豪華さだ。ヴェルマは和央ようか、湖月わたる、水夏希。ロキシーは朝海ひかる、貴城けい、大和悠河。ビリーは峰さを理、麻路さき、姿月あさと。全員が登場するスペシャルバージョンもあるのでご確認を。

 【メモ】12月10~19日まで東京国際フォーラムで上演予定。問い合わせは梅田芸術劇場【東京】0570-077-039。



ミュージカルランド