旭市で「障害者に釣りを楽しんでもらうにはどうすれば良いか」をテーマにした「釣り体験教室ツアー」が行われた。香取・海匝地域を中心に障害者同士の交流や社会参加を支援するボランティア団体「和希楽会」(木内智史代表)の医師やボランティアスタッフらが参加。快晴の下、車イスに座ったまま、釣りの妙味を堪能した。
日本釣振興会県支部(五十嵐正弘支部長=以下日釣振)主催、同市が後援。
朝9時に集合。まずは震災の爪痕が残る飯岡漁港へ。近くの飯岡みなと公園に障害者用トイレが完備されている。
車止めがある堤防入り口は車イスが通れるがスロープが長く、日釣振の景山昭一さんが実際に乗ってみると「けっこうキツイですね」。車イスを回す手にタコができそうだ。
キャスティングでは車イスに竿がぶつかったりするが慣れれば大丈夫。大物が掛かりタモ(玉網)が必要なときは人の手を借りたほうが良い。
漁港で船着き場を見学後、本紙ニュース提供店の船宿「幸丸」へ。3代目当主の若女将、向後由香さんに話を聞いた。ボランティアスタッフから「船に車イスで乗ることはできるのか」「車イスを固定することは可能なのか」「釣り座に身体を安定させるイスの用意は」など障害者目線の質問が続出。それに対するアイデアもたくさん出てきた。
次は釣具店、プロショップケイズ旭店(石毛卓店長)を視察。スタッフは未経験者がほとんどで、竿や仕掛け、ルアーなど豊富な種類に目を見張るばかりだった。
市営の「長熊釣り堀センター」へ移動して昼食。午後からのヘラブナ釣りに備える。
インストラクターはプロのヘラ師、戸祭義晃さん(33)と浮師の熱田俊一さん(37)。
ヘラブナのエサは練りエサとうどん。2本バリの下にはうどんを付け、上バリに練りエサを丸め込む。2・7メートルのヘラ竿を持ち、いよいよ釣り体験が始まった。
まずは一投目。いきなり練りエサが取れたり、自分の洋服を“釣ったり”と思うようにならない。始めの1時間は苦戦していた。それでもインストラクターの指導で投入を繰り返すうちに少しずつ慣れてきたようだ。
ちゃんと打ち込めるようになり、浮きをじっと見つめていると浮きが沈むアタリが出始めた。魚が寄ってきているようだ。
歓声とともに最初に釣り上げたのは親子で参加の菅谷美智子さんだった。その後はあちらこちらでヘラブナを釣り上げる姿が見られた。
車イスで体験していた代表の木内さんも取り込んでいる。感想を聞くと「面白いですね。これなら車イスでもできると思います」と話していた。
遊漁船は安全面で課題がありそうだ。堤防や釣り堀では障害者でも十分に楽しめる。そして支えるリハビリケアのボランティアスタッフが一緒に楽しむことができればさらに安心だ。
今回の教室の発案者、小倉さつきさんは、「興奮しました。釣りの楽しさをぜひ皆さんに伝えたい」とヘラブナをゲットし、大喜びで話していた。(小金井考和)