死刑廃止論者の千葉景子法相が民主党政権で初となる死刑執行に踏みきる一方で、存廃を含めた死刑制度の勉強会を省内に立ち上げ、報道陣への刑場公開を指示したことが、社会に波紋を投げかけた。
裁判員裁判がスタートして1年余。この間、死刑判決はなかったが、近い将来、国民から選ばれる裁判員が極刑という重い決断を迫られる時はきっと来る。死刑とは国家が合法的に人命を奪うこと。執行の方法(日本では絞首刑)や執行を待つ死刑囚の生活、告知がいつ、どのように行われるのか。裁判員はこれまでベールに包まれてきた死刑の実態、酷(むご)さを知った上で判決を下さねばならない。それには情報公開が必要だ。
共同通信社が今月行った世論調査では「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた人は75%に上り、死刑制度を支持する人が依然多い実態が鮮明となった。ただ、世界的には死刑制度を維持する国は少数派で、日本、中国、北朝鮮、キューバやイラク、エジプトなど57カ国。欧州連合(EU)加盟国やロシア、フィリピンなど139カ国が死刑を廃止または長期停止している。米国は50州のうち35州に死刑制度があり、存置国に含まれている。
刑事訴訟法では死刑の判決確定から6カ月以内に執行することになっている。現在、日本には105人の死刑囚がいるが、判決確定から40年以上も拘置されたままの囚人もいる。未執行のまま病死する囚人も目立つ。冤罪(えんざい)を防ぐために裁判記録の精査や再審請求などもあるため、執行までにかなりの時間がかかっているのが現状だ。
今回の死刑執行が注目されたのは、執行命令書にサインしたのが死刑廃止を唱える千葉法相だったためだ。「失望」「不意打ち」「国家の残虐」。大臣もメンバーだった「死刑廃止を推進する議員連盟」や社民党、国内外の人権団体などから非難声明が相次いだ。
裁判員裁判では性犯罪の被害を重くみて、厳しい刑が言い渡される傾向にある。無期懲役か死刑か、判断に迷う事件ではどうか。制度がある以上、避けては通れない。裁判員にわが身を置き換えて考える。そこから議論も始まる。死刑支持の世論に変化が表れるとしたら、裁判員裁判からであろう。