映画007シリーズの最新作に、南米某国の地下に眠る水資源を狙う犯罪組織が登場した。蛇口をひねれば安心して飲める水が出てくる日本人の感覚では分かりにくいが、現実の世界でも水をめぐるビジネスは石油、ウラン、レアメタルなどに負けないぐらいに加熱している。
国連の調査で、人類が利用可能な地下水は1050万立方キロと報告されているが、地球温暖化による異常気象や新興国の経済の急成長などで、現在以上に飲料水、農業用水の増大が予想され、水資源の開発は急務となっている。
WHO(世界保健機関)によれば、水道水を直接飲める国は日本を含め世界中でわずか11カ国。その日本の水道水は、水質浄化などで世界トップレベルの技術を持つ国内企業と自治体による円滑な水道事業経営に支えられている。
世界の水市場は、近い将来100兆円になると見込まれている。しかし、現在の水市場は日本の企業ではなく、「石油メジャー」ならぬ「水メジャー」と呼ばれている欧州の企業が主役になっている。日本の企業は高い技術を持っているにもかかわらず、事業全体ではなく部分的な仕事、いわば“下請け”状態に止まっている。
日本国内では浄水などを企業が、水道事業経営は自治体が担っているのに対して、欧州企業は水の供給、施設管理から料金の徴収まで水道事業を総合的に扱っていることから、シンガポールや韓国などから国家規模の事業を落札している。昨年、本県の手賀沼浄化処理(3年間、48億円)を落札したのも「水メジャー」の一つヴェオリア社(仏)。当然、国内企業も入札に参加。個々の技術での評価は高かったものの、マネージメントを含めた総合力でかなわなかったという。
携帯電話、薄型テレビで、日本の企業は高い技術力を持ちながら、国家と一体となって市場を開拓した他国企業の後塵(こうじん)を拝した。水事業でその轍(てつ)を踏まないようにと、東京都の猪瀬直樹副知事は、自治体だけでなく民間企業も巻き込み都の水道事業のノウハウを「東京水道ブランド」として海外に売り込もうとしている。日本の新しい官、民一体による世界を相手にした市場開拓のモデルとして今後の展開に注目したい。