リーマン・ショックに端を発した世界的金融危機の煽(あお)りで、一時は瀕死(ひんし)の状態にあった日本の自動車産業に回復の兆しが見えている。国内大手8社は3月期決算で各社とも営業黒字を確保。日産のカルロス・ゴーン社長が8億9千万円の役員報酬を受け取ったことも大々的に報じられた。
国内市場を活気づかせたのが昨年4月からのエコカーに対する減税と補助金制度だが、補助金は今年9月末に、減税も2012年中に終了することになっている。優遇制度が終了すれば、現在のプチ・バブル状態も終わり、優遇制度を目当てにした、少しばかりの燃費の良さだけを売り物にしたエコカーはやがて市場から淘汰(とうた)されるだろう。
現在のエコカーの主流がハイブリッド(HV)車。トヨタが1997年に世界初のHV市販車、プリウスを発表した時点では、電気自動車(EV)や燃料電池車へ移行するまでの“つなぎ”としか思われていなかったが、今や欧米のメーカーもこぞってHV車を投入している。
HV車に替わるエコカーの主役として各社が開発、普及に最も力を注いでいるのがEVだが、普及には航続距離の短さという弱点を克服しなくてはならない。EVの心臓部のバッテリーは現在、ニッケル水素電池が主流だが、蓄電容量が小さいため航続距離を思うように延ばすことができないでいる。
このため各社とも蓄電能力の高いリチウムイオン電池を主流にしようと量産化にしのぎを削っており、電池メーカーなどの異業種との提携も活発化している。トヨタは5月に米国のEVベンチャー、テスラ社との提携を発表。この分野で独自の技術を持つ同社との連携でEV市場の主導権を一挙に握ろうとしている。
ただし、排気ガスゼロのEVでも、廃車にしてしまえばごみと化し、地球環境に悪影響を与える。このことをよく知る欧州メーカーは90年代から、車体の完全リサイクル化に向けた研究を重ねており、日本のメーカーよりも一日の長がある。HVやEVといった部分的な技術に目を奪われることなく、広い視野でエコに取り組んでいるのはどのメーカーかを見極めることが、真のエコカーを普及させるために必要だろう。