景気回復の兆しが、いつまでも見られない日本経済の中、多くの公立美術館が財政難などから苦境に直面している。一方で、人気の企画展には入場待ちの行列ができるほど足を運ぶ人たちの姿が目立つ。博物館や美術館を訪ねることが一つのブームになっているのかもしれない。地域活性化の触媒としても、美術の持つ可能性に期待できないだろうか。
都内では、美術館や博物館の企画展が相変わらずにぎわっている。「国宝阿修羅展」や「ルーヴル美術館展」などで記録的な入場者数を誇った昨年に続き、東京国立博物館(上野)で今春に開かれた「長谷川等伯」展は1時間以上の入場待ちが連日続いた。国立新美術館(六本木)で現在開催中の「オルセー美術館展」も話題作ぞろい。今年は欧米の美術館の改修工事に伴い、日本人に人気の印象派を中心とする展覧会が相次ぎ、各会場内での混雑は日常化しそうだ。
首都圏の中でも地味な存在感が気掛かりだった千葉だが、今年は状況が一変した。千葉市美術館で最近開かれた「伊藤若冲 アナザーワールド」展は、1995年の開館以来3番目となる約3万6千人の入場者を記録した。近年人気が高い伊藤若冲にあやかったとしても、その動員力は明るい材料を感じさせるものだった。
もちろん美術館側にとっては入場者数の多さが運営の主目的ではないのかもしれない。しかし、せっかく収蔵した作品を公開したり、良質の展覧会を企画しても、入場者がわずかでは存在意義を問われかねない。
いま、地域社会の中でアートに何ができるのかが注目され、全国各地で都市や地域を活性化する取り組みが相次ぐ。新潟県南部の過疎の中山間地に多くの観客を集める「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」は、その代表的なものだ。間もなく始まる「瀬戸内国際芸術祭」も大掛かりな取り組みの一つ。規模こそ違うが、富津市金谷では3月に「金谷美術館」が開館し、地域づくりの交流拠点として地道な活動を始めている。
美術熱の高まりや千葉市美術館の今回の盛況を、美術館が単なる公開・展示の空間にとどまらず、さらに積極的に市民や地域との交流や連携を進めるきっかけにしてほしい。