就任後初めて沖縄を訪問した鳩山首相は、米軍普天間飛行場問題で繰り返してきた「最低でも県外」を撤回、「県内移設」を表明した。約束を果たすために首相は十分な努力を重ねていない-の思いが、沖縄県民、さらに国民の反発、不信につながっている。無策が招いた混迷。首相の責任は極めて重い。鹿児島・徳之島への一部機能移転にも地元が拒絶。沖縄再訪問が検討されている。事態打開に向けた首相、政権の精力的取り組みが求められる。
“公約”撤回の理由を、首相は「日米同盟や抑止力の観点から、すべて県外にというのは現実的に難しい」と述べた。「困難」は当初から自明だったはず。それでも首相の発言だからこそ、進展に期待を寄せていた。「今さら」という思いが強い。
就任から約8カ月。首相は、合意の見直しについて米側と深く議論したのか。あるいは、県外移設に向け、安全保障の「分担」を国民に呼び掛けたのか。少なくとも、国民には全力を尽くしたようには見えなかった。何ら有効な策を講じることなく、時間を浪費しておきながら「約束を果たせなくなった」と開き直られても納得できないのは当然。期待を抱かせた分だけ失望を大きくした。
首相(政権)の狙い、戦略が見えないことへのいら立ちも大きい。沖縄訪問で直談判するからには、決着に向けた何らかの方策提示が期待されたが、結局、具体案は示されずじまい。その上で、引き続き「沖縄の負担」を求めた首相に、県民の怒り、不信が増幅した。
ただ、無策を嘆いてばかりいても突破口は見えてこない。何らかの「移設」策を実現しない限り、沖縄県民の苦痛は改善されない。迷走は、首相が重要視した「日米関係」にとってもマイナスにしかならない。合意見直しを米側と粘り強く折衝するのか。県外移設を候補地と交渉するのか。あるいは県内移設に理解を求めるのか。首相には進退をかけた、事態打開への取り組みが求められる。
政権が目標を明示するのは重要で、クリアできなければ担当能力が問われることになる。「5月末までの決着」。首相が掲げた期限までに、全面解決するとはもはやだれも期待していないが、少なくとも解決の糸口、道筋を示す責任はある。