南極海と北西太平洋の調査捕鯨で年間千頭以上のミンククジラを捕獲している日本。その捕獲数を半減する代わりに沿岸でのミンククジラ捕獲を年120頭まで認める。国際捕鯨委員会(IWC)が、6月にモロッコで開く年次総会に向けて議長・副議長提案を発表した。捕鯨国と反捕鯨国、双方の主張に配慮した妥協案だ。
和田(南房総市)など沿岸4カ所の捕鯨基地にとって実質的な商業捕鯨の再開は喜ばしい。だが、捕獲枠は日本が設定している現行の調査捕鯨枠と変わらない。総会でこの提案が通れば、日本の調査捕鯨は今後10年間停止され、IWCが捕獲数を管理することになる。
今回の議長提案とりまとめに動いたのは反捕鯨国の米国だった。2008年にチリであったIWC総会で、グリーンランド(デンマーク自治領)が要求した先住民の捕鯨枠が否決されたことに危機感を覚えたためだ。米国・アラスカでは先住民が捕鯨を続けている。先住民の捕鯨も認めずという議論が、IWCの主流となれば、アラスカにも波及しかねず、米政権は新たな難題を抱え込むことになる。アラスカの捕鯨継続に根拠を与えるために、日本の沿岸捕鯨を承認するよう反捕鯨国に働きかけた、というのが真相らしい。決して日本のためではない。
IWC年次総会で焦点となるのは南極海。日本は同海域の調査捕鯨枠を現行850頭に設定している。それを年360~440頭に減らす捕鯨枠提案を行うのに対し、オーストラリアは5年以内の捕鯨全廃を求めている。歩み寄りは難しい。
IWC議長提案は南極海での日本の捕鯨枠について、今後5年は400頭、その後5年間は200頭としている。日本の主張は10年間、400頭前後である。反捕鯨の加盟国が多数を占めるIWC。将来にわたって段階的な削減が続けば、最終的には捕鯨廃止となりはしないか。日本の危惧(きぐ)するところだ。
米国が自国の都合でとりまとめに奔走した議長案が、たとえ否決されても、IWCはこれを契機に捕鯨国と反捕鯨国との間で繰り返されてきた不毛な論争に終止符を打ち、個体数把握の科学的データを基にした実りある議論を始めるべき時であろう。余りある資源ならば有効活用して悪かろうはずはない。