日本向けのクロマグロ乱獲で世界最大の漁場である大西洋・地中海で個体数が激減した。ならば日本人の大好きなクロマグロをジャイアントパンダやシーラカンスのようにワシントン条約で国際的な売買を禁止してしまおう。こんなモナコの提案を欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が支持し、今月13日からカタールで開かれる同条約の締約国会議で採択を目指している。
漁獲規制を飛び越え、いきなり国際取引禁止へと動くのは、野生動物保護に名を借りた暴力に等しい。世界のクロマグロの8割を消費する日本にすれば、とても看過できない問題だ。まずは生態調査を尽くした後に出てくるべき議論であろう。
日本は、クロマグロを「保護」ではなく、漁獲量を調整して「資源管理」しようとの立場だ。大西洋のクロマグロの管理を担当する大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)も昨年末、2010年の漁獲枠を09年より4割減らす大幅な規制策を決めたばかりだ。
ワシントン条約のカタール会議では、締約国175カ国中、投票国の3分の2以上の賛成があれば事実上、日本を標的とした国際取引禁止が決定してしまう。
取引禁止は昨年、モナコが提案。欧州委は支持を表明したが、漁業国のフランス、イタリアが反対したため、9月にいったんは否決された。だが、ここへきて両国が支持に回ったことでEU加盟27カ国は輸出入禁止へと足並みをそろえそうだ。ワシントン条約の事務局も取引禁止の支持を各国に勧告している。
日本にとって情勢は厳しく、政府はアフリカや中東諸国などへの働きかけを強めているが、たとえカタール会議で取引禁止が採択されても日本は留保権を行使して決定には従わない方針だ。
日本市場に供給されるクロマグロは年間、約4万3千トン。うち4割は大西洋・地中海産だ。この海域での輸出入が禁止されれば日本には近海ものを含めて主に太平洋産しか入ってこなくなり、価格も上がる。
貴重なクロマグロ資源を守るため、禁漁を主張するEUと、漁獲規制で乗り切れるとする日本。両者の議論がかみ合わぬまま、クロマグロも「反捕鯨」の歴史をたどりはしないかとの懸念が深まる。