トヨタ自動車が新型「プリウス」のブレーキの不具合に対してリコール(回収、無償修理)を行っている。その数は、同様のシステムを搭載する他の3車種を含めると全世界で約43万7000台。当初は「ささいなこと」と、問題を軽視した同社の危機管理意識の甘さが、トヨタブランドだけでなく“メード・イン・ジャパン”に対する信頼をも大きく損ねたようだ。
問題となった不具合は、雪道などで低速走行時にブレーキをかけた際、一瞬ブレーキが効きにくくなるというもの。滑りやすい路面でブレーキングすると、自動車の姿勢を正しく制御しようとアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)が介入するが、システムの作動時にドライバーに「ブレーキが効かない」という一瞬の空白を感じさせるようで、時速20キロで走行していた場合、約70センチほど制動距離が延びると報告されている。
この問題が表面化した直後の会見で、トヨタの重役は「あくまでもフィーリング(運転感覚)の問題」と高をくくっていた。製品の品質の高さに加え、手厚いサービスを売りにしているトヨタとは思えない、傲慢(ごうまん)とも受け止められるような発言に違和感を覚えた。
トヨタは昨年、米国で一部車種のアクセルペダルの不具合などで大きな痛手を被ったばかり。国内だけでひと月に2万2000台(昨年12月)を売る、今や同社のドル箱となっているプリウスに関する問題だけに、傷口を広げたくないという意識が働いたのか、あるいは自社の技術を「絶対」と信じての発言だったのだろうか。
この問題に対するトヨタ側の態度に多くのユーザーが不満と不審の声を上げると、豊田章男社長があらためて会見を行い不具合を認めた。現在“火消し”に躍起となっているが、とりわけ海外での同社に対するイメージダウンはなかなか払拭(ふっしょく)できそうにない。
初代プリウスが誕生した1997年。「21世紀に間に合いました」と鉄腕アトムが誇らしげにプリウスを紹介するテレビCMが放送されていた。新たな技術に果敢に挑んだ当時の同社の志の高さを感じさせる名CMコピーとして今も記憶している。トヨタには今一度当時の志を思い出し、ユーザー目線を取り戻してもらいたい。