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私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


一泊のはずが…


 「昨夜ネコが一泊しました。なんだか今夜も泊まる気配です」。友人にこうハガキを書いた。その日から一週間が過ぎてしまった。

 今この原稿を書いているパソコンのキーの上にそのネコは乗り、55555…などと勝手にいろいろな文字を画面に打ち出してしまう。そもそも私はネコを飼う気はなかった。なのに、甘えた鳴き声と擦り寄ってくる姿態にほだされてしまったのだ。

 一週間前、近所のご主人が玄関に現れて一気に話し始めた。雨の中びしょ濡れになったネコが自分の家の前にいたこと。シャンプーをして爪を切ってやったこと。とても可愛いネコだということ。甘えて肩に乗ってくること。そしてケイタイを取り出して「ほらね、可愛いでしょう」と写真を見せる。子ネコではなかった。顔が黒いキジネコだった。いくら「可愛い」と言われても飼う気はないのだから「もう大きいですね」と正直な感想を述べた。するとご主人は「三か月ぐらいかな。なにしろ可愛いんだ」と言う。「じゃあ、見るだけ見せて。うちにはインコがいるから飼えませんよ」と念を押した。

 そのご主人の家に行くと、それはそれは器量よしのスマートなネコがいた。グレーの縞模様で思わず「まぁ可愛い!」と賛美した。しかし、そのネコはご主人の家のネコでキジネコに向かって「ふううっ」と怒っている。そりゃぁそうだろう、自分のテリトリーを侵されるのだから。二匹を比べると月とスッポンだ。「お宅のネコは器量よしですねぇ」と言うと「いいや、これだって良く見るとこんなに可愛い。それに性質がとてもいい」とキジネコをべた褒めだ。ゴロゴロと喉を鳴らして私の顔や胸、腕に体を押し付けてくる。どうすると人間に可愛がられるかを知っているようだ。捨てネコだろうか。

 私はふと考えた。アニマルセラピーというではないか。夫にこのネコを見せたら夫は喜ぶかもしれない。きっと脳や体にいいかもしれない。

 「ちょっと借りてもいいですか。夫に見せるだけ。飼いませんけど」と言うとご主人はネコを抱いて再びわが家に来てくれた。そうしてその夜ネコは一泊したのだった。・・・


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