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本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「生まれる」 『明日』


イラスト 藤原あずみ

  九月に娘の里帰り出産が控えている。初めての孫なので力が入ってしまって、肌に触れるものはオーガニックコットンにしようとか、布オムツがいいのではないかとか、準備を始めているところだ。出産準備といえば、古い浴衣をほどいてオムツを縫う姿が思い浮かぶ。だが、今は紙オムツが主流で、オムツを縫う人はあまりいないのだろう。

 娘とはできるだけ布オムツを使おうと話しあった。私も今は仕事がないので少し手伝いができるから、「オムツなし育児」にも挑戦してみようか、とも話しているところだ。「オムツなし育児」とは、赤ちゃんとコミュニケーションを図りながら、排泄のサインを読み取り、オムツではなくおまるで最初から排泄させるやり方だ。排泄の世話を手抜きしない事で母子の信頼が深まり、結果的には子育てが楽になるらしい。私にとっても初体験になる。布オムツと紙オムツも使っての、ゆるい挑戦だけれど。

 先日、買い物ついでに街の洋品店に寄った。布オムツを買おうとしたらお店の人から「今は扱ってません。みんな紙オムツを使うので」と言われた。帰ろうとすると「あ、少し残っているかも」と呼び止められた。そして、オムツ、産着など売れ残っていた品を半額で譲ってもらった。オムツカバーは二枚ただで戴いてしまった。「本当は布のほうがいいんですよねえ。まだあるから、必要だったらまたあげますよ」と、用品店のおばあちゃんが親切に言ってくださった。麻の葉模様の産着は、私にも見覚えがある懐かしいものだった。

 子育ては時代によって流行り廃りがある。新しいものがいいとは限らないし古いものにこだわる必要も無い。ただ、子育ては、その場限りのものではない。未来へつながる大事な仕事だと、娘には伝えたい。

 そして、ふと、母にもらった古い浴衣があったのを思い出し、もし時間があったら、浴衣をほどいて手縫いのオムツも作ってみようと思い立った。きっかけは本の中の、あるシーンだった。井上光晴さんの『明日』の中にこんな描写がある。「朝のおだやかな光のみなぎる部屋で、母は縫い上げたばかりの産着を畳む。静脈の浮き出た手が弾みをつけてゆるやかに動き、折り目の上でしばらく休止すると、小鳥でも包みこむようにまるくなる。真新しい産着とふたつのおむつの山。背筋を伸ばし、少し首を傾けてそれを見やりながら、母は小さく安堵の吐息を洩らす。私がふふと笑うと。母も鼻に皺を寄せて笑い返した。さ、もういつ生まれてもよか、とその顔はいっている。昨夜、母は殆んど眠っていないはずだ」。

 出産を明日に控えたツル子。陣痛の合間に彼女は様々な事を思い返す。妹が生まれた時、母が余った乳を茶碗に搾ったのを味見した事。こんなまずいものを赤ん坊は飲んでいるのかと思った事……。

 【メモ】「明日」井上光晴著/集英社

 

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