ドードー鳥をご存知だろうか?「不思議の国のアリス」を読んだ方なら、ああ、あの鳥かとすぐに思い出すだろう。涙の池に落っこちた動物たちが「かわかし競争」をする場面に出てくる。架空の鳥ではなく絶滅した鳥だと私が知ったのは、大人になってからだった。
ドードー鳥はインド洋のモーリシャス島に住んでいた。鳩の仲間らしいが、空は飛べず、走ろうとしてもお尻が地面にぶつかってしまうので、よちよち歩きしか出来なかった。十六世紀にモーリシャス島を発見したポルトガルの船乗りは、おかしなこの鳥を「ドード」と呼んだ。「ドード」と言うのはポルトガル語で「おばかさん」の意味だそう。その後百年足らずで、この気の良い鳥は島の人たちや犬や豚やねずみの餌食になって滅んでしまう。「滅びの美」という言葉が当てはまるのかどうか、ショーン・ライスが描いたドードーの挿絵はユーモラスでありながら威風堂々として美しい。
生き抜く強さは、どこか狡猾さや図太さ、欲の深さとつながっているような気がしてならない。滅びの道を辿る種は、もしかしたら純粋でおひとよしなのかもしれない。決してドード(おばかさん)なだけではないと思うのだけれど。
本書では、ドードーを含め十六種類の絶滅した鳥獣を紹介している。絵は美しく文は簡潔だ。ファンタジックな挿絵を眺めながら、追悼文のような文字を辿ると、読者はたちまち小さな博物館の静かな空間に引き込まれた気がするだろう。これは、単なる絶滅動物図鑑ではなく、人間のしたことを思い出すための十六の陳列棚なのだ。生きていた時そのままの姿で、彼らはその棚にいる。動かない体。凍りついた瞳。だが、目が合った瞬間、息を吹きかえし、運命を語り始める。
「私たち、空を埋め尽くすほどの群れになって、ずいぶん遠くまで旅をしたものです」。ため息をつくのはリョコウバト。「けれど、あっという間でした。私たちは捕まって羽をむしりとられました。そして食べつくされたんです」
黄色と黒の羽を持つハワイオーオーが美しい声で相づちを打つ。「私たちの仲間もそうよ。この黄色と黒の羽で作るケープが大流行したのです。ケープを一枚作るたびに、仲間が何羽殺されたことでしょう。」
【メモ】「ドードーを知っていますか?」文・ピーター・メイル/絵・ショーン・ライス/ベネッセ出版