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本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「魂の脱出」 『西の魔女が死んだ』


 好きな物語は、映画で追体験はしたくないと思っている。だが、すごく好きだから、どんな風に映像になったのか確めたいと思うこともある。本のイメージを映画に壊されて、がっかりすることが多いけれど、今回は違った。先日、再上映の映画を最終日に駆け込みで観に行った。

 梨木香歩原作の『西の魔女が死んだ』。傷つきやすい魂を持った少女が、学校で居場所をなくし、ひと夏を、大好きな祖母の家で過ごす物語だ。祖母はイギリス人で、自然の中で隠れ人のような暮らしをしている。主人公のまいは、祖母と暮らしながら「魔女修行」に励むうちに、日常のリズムを取り戻し、少しずつ生きるしなやかさを身につけていく。まいが祖母と過ごしたひと夏の風景は、絵のように美しい。ラベンダーの茂みでシーツを干したり、山の斜面いちめんに実った野イチゴを摘んだり、ジャムを作ったり。ハーブのお茶をたっぷり沸かし、畑の害虫駆除をしたり。映画ではそれが余すところなく忠実に再現され、想像を超えた豊かな情景を見せてくれた。要となる祖母役の女優はシャーリー・マクレーンの娘、サチ・パーカー。彼女の日本語の慈愛に満ちてきれいなこと。聴いているだけで、頭をなでられているような安らいだ気持ちになった。映画と原作がいい具合に心の中で溶け合った。久しぶりに本を読み返した。

 まいと祖母との穏やかな日常には、やがて、闖入者が現れる。近所に住むゲンジというがさつな男だ。祖母はゲンジを享受するが、まいにはそれができない。ゲンジのことが原因で心にわだかまりを残したまま、まいは祖母のもとを去ることになる。そして、新しい生活を始めたまいは、二年後に祖母の死を知る。

 この物語は一人の少女の成長物語だが、生とは何か、死とは何かと、随所で静かに問いかけてくる。死を意識した時、人は立ち止まり、なぜ生きるのかも考えるのだろう。死を考えることは、同時に生を考えることだと気づかされた。「人は死んだらどうなるの?」と、まいは祖母に聞く。「人は身体と魂が合わさってできています。死ぬ、ということはずっと身体に縛られていた魂が、身体から離れて自由になることだと思いますよ」と、祖母は答える。「じゃあ、苦しむために身体ってあるみたい。身体をもつ必要があるの?」まいが訊ねると、祖母は答える。「魂は身体を持つことによってしか物事を体験できないし、体験によってしか、魂は成長できないんですよ。春になったら種から芽が出るように、それが光に向って伸びていくように、魂は成長したがっているんですよ」。そして、祖母は約束する。「おばあちゃんが死んだら、まいに知らせてあげます」。...

 【メモ】「西の魔女が死んだ」梨木香歩/新潮社


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