検査薬を使った脳こうそく検査の手順を説明する五十嵐一衛社長(写真奥)=千葉市中央区の千葉大亥鼻キャンパス敷地内にある起業支援施設の同社研究開発室
脳こうそくの早期発見につながる検査薬が昨年秋から人間ドックを行う県内の医療機関で採用されはじめている。千葉大発ベンチャーのアミンファーマ研究所(千葉市中央区)が開発した検査薬「無症候性脳梗塞バイオマーカー」は従来の検査に比べ費用が安く、国内だけで1千万人とされる高血圧などの“隠れ脳こうそく”患者向けに簡易の検査方法として需要が見込める。
脳こうそく診断は画像診断(MRI)により血管が詰まり血液の通り道が細くなっている個所を実際に目で確認する方法が一般的だ。これに対し同社検査薬は、患者から採取した少量の血液を用いて分析。体内の変化を把握するための体内物質(バイオマーカー)として、細胞が傷付いた時に生じ細胞を傷付ける働きもするアルデヒドの一種「アクロレイン」など3種類の物質の血中濃度を測定し、自覚症状がないうちに脳こうそくの進行具合を調べる。この方法は85%の精度を持つことが臨床実験で示された。
MRI検査費用4~5万円と比べ血液検査は7千円前後と安く、人間ドックのオプションとして販路拡大を目指す。昨年9月に販売を始めたばかりだが、すでに県内を中心に14医療機関が採用。五十嵐一衛社長(68)は「最近は1カ月に2件のペースで提携医療機関が増えている」と手応えを語る。
「バイオベンチャーの成功は難しい」
医薬系の研究は実験器具や専門的な薬品の購入費用などで資金面の負担が大きいのが実情。企業として売り上げもない中で、多額の研究開発費用や入居施設の賃料をねん出するのは至難の業だ。同社もNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)や地元行政からの補助金を支えに厳しい時期を乗り切ってきた。
資金難のほかに突破しなければならなかったのは、細胞の破壊に活性酸素が大きく関与するという「定説」の壁。アクロレインがより強い毒性を持つとする五十嵐社長の“新発見”に批判的な見方が当初は強かった。しかし、その後五十嵐社長の論文が海外の有力科学誌に掲載され、国内でもほかの科学者により関連する研究成果が報告されると、検査薬の事業化に弾みがついた。
脳こうそくリスクを持つ人のうち検査を受ける人は現状で約1%の10万人にとどまるが、同社は検査薬の普及により「将来的には1割の100万人が利用」と試算。3年後の決算は創業後初の黒字化を見込む。(篠塚紀子)