緩やかな川の流れに身を任せる魚や鳥たち。慌ただしい人の世を尻目に、スローな時の運びを楽しんでいるかのように映る。だが、この川はもともと人間が人間のために造った人工物、運河なのだ。
利根運河は、利根川と江戸川を結ぶ長さ約8.5キロの運河。オランダのムルデル技師の設計により着工、1890(明治23)年に開通した。それまで山の頂を描くように、関宿(県内最北端)を迂回(うかい)して銚子から東京へ物品を運んでいた流通経路が、運河開通で短縮。距離にして約50キロ、時間にして6時間ほど短くなったという。
県内の流通産業に大きく貢献した同運河も、陸路の整備や1941年の洪水被害によって役割を終えた。以後は、ゆるやかな導水路として市民の憩いの場になっている。
川の両側を囲う堤防はコンクリートではなく、草が生い茂る湿地や森だ。それだけに、四季を通してさまざまな生き物や草花を見ることができる。
同運河の一角に整備された利根運河水辺公園(流山市東深井)を散策してみると、アヒルやカルガモ、サギ、オニヤンマにアゲハチョウなどがお出迎え。今ならカッコウやオオヨシキリ(ウグイスの一種)のバードウオッチングも期待できる。人間のために造った場所で生息する多くの生物たち。人類と自然との共生を考えるきっかけになった。
◇利根運河水辺公園(電話04-7152-0102) アクセス=東武野田線運河駅から徒歩約5分。