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郷土の人の本

風土への愛着と政治的視点 秋元大吉郎著「百句百景」


 初蝶の石を抜け出る白さかな  秋元大吉郎

 昭和五十八年四月、流山市長選の公示を明日に控えて、立候補者の秋元大吉郎氏がひょっこり句会に現れて皆を驚かせた。冒頭の句は、当日の句会の最高点になり、また秋元氏は見事に当選して、ここに俳人市長が誕生した。

 秋元氏にはすでに三冊の句集があるが、このたび、崙書房から『百句百景』も上梓した。本書は平成九年から俳誌「軸」(河合凱夫・秋尾敏主宰)に連載した句を収める。著者は「軸」の同人会長を長く務めた。

 著者は昭和二年、新川村(現流山市)の生まれ。父が村長を務めた旧家である。旧制東葛飾中学卒業。市議一期、県議二期を経て流山市長になった。

 著者の住む中野久木は、江戸川沖積低地に近い。この沖積低地は、万葉集にも詠まれ、古代から稲作地域であった。

 著者が子供のころ泳いだ利根運河は、今でも八十八所札所巡拝が行われているという。

減反に慣らされつづけ冬耕す  和井田なを

 著者は、為政者としてまた稲作の立場から農政を批判し、冬耕が土を豊じょうにすることを強調する。

 田植足袋脱いで十指を解き放つ 石塚日出子

 昭和三十年代、耕運機の出現に伴って、田の作業用足袋をはくようになった。流山地方では「田足袋」とか、「田地」と言っていると著者はいう。

 刈田夕焼一家を囲む火伏林   逆井 和夫

 火伏林は防火の屋敷林だが、現在では若い樹や竹に代わっているという。

 村中の田を一枚にして蛙    川口 俊江

 のどかな風景だが、時代の推移の中に人もカエルも生存競争であり、著者は生命の尊さ、はかなさが胸に去来するのである。

 一匹の狼でよし衣被  西宮はるゑ

 一見ぎょっとした著者だが、季語に感心した。皮つきの里芋を流山では「はじき芋」ともいう由。...

(大木 雪浪 おおき・せつろう…俳人、「木道」代表、県現代俳句協会顧問、千葉市在住)


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