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郷土の人の本

一瞬の表情やしぐさ活写 田村満写真集『盤洲・富津干潟周辺の野鳥』


 東京湾の盤洲・富津干潟で野鳥たちがこれほどダイナミックで豊かな表情をみせているのに驚かれるであろう。

 この写真集は飛行に適応しきった鳥の動きの美しさ(機能美)や普段あまりみることができない一瞬の表情やしぐさの写真を掲載したことに特色がある。例えば、タカ類のミサゴの漁の組写真。「ミサゴの飛翔」では飛行中の振り向きざまの鋭い目つきとしなやかな動き、翼をたたんで突っ込み、八本のカギつめを突き出し魚につかみかかる。大物の魚をつかんで飛ぶ姿など躍動する一連の動作を撮影している。また、富津岬で秋に撮られた「ハヤブサ若鳥」の写真。キャプションに「空中で捕食している。吐き出したのはヒヨドリの眼球か」とある。脚にヒヨドリをつかみ、眼球を空中に吐き出した瞬間が撮影されている。まさに圧巻である。そして、「スズガモ」の組写真。朝夕に餌を求めて次から次へと大群が海へ飛び立つ。その姿は壮観で美しく情緒がある。キャプションに「盤洲・富津周辺の東京湾では数万羽のスズガモが越冬する」とある。このことはこの海域がスズガモの大群を支えるだけの生物の豊かさがあることを物語る。また、「まどろむメダイチドリ冬羽」の写真ではチドリが砂浜でうとうとして目を閉じかかっている。まわりには青々としたハマヒルガオが生えている。キャプションに「満腹したのか、暖かいハマヒルガオの砂浜に座って眼を閉じていた」とある。その表情に干潟の自然のやさしさに包まれた幸せなチドリの姿がある。その他に、水中撮影のために工夫した装置で撮ったウミウシ類、ハゼ類などの海生動物の写真も含まれている。

 各写真のキャプションは長い間、野鳥の写真を撮り続けた著者からにじみ出た簡潔で味わい深い文章である。

 東京湾では多くの干潟が埋め立てられ、残り少なくなった。その貴重な干潟の一つが盤洲・富津干潟である。この写真集はこの干潟を舞台に演じられる野鳥たちのさまざまな表情の一瞬を見事にとらえて見せてくれる。それが、地域の野鳥への興味と理解につながり、同時に東京湾の干潟保全の強いアピールにもなっている。

 野鳥愛好家や写真撮影の趣味を持っている方はもちろんのこと、地域の方々にぜひ一読をお勧めしたい。

 著者は元住友化学千葉工場に勤務。袖ケ浦市在住。四十五年間で撮り続けた野鳥の写真は約五万枚。掲載したのは厳選した三百八枚。そのうち、野鳥は百三十二種二百六十一枚。自費出版、発行元はうらべ書房。A4変型判、一一二ページ。定価二千百円。問い合わせ先は田村満さん(電話0438-63-1129)へ。県立中央博物館のショップや木更津市周辺の書店でも販売。

(成田 篤彦…県立中央博物館友の会副会長、木更津市在住)


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