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郷土の人の本

孤高の画家の代表作を紹介 川崎浹・西本匡伸監修『高島野十郎画集―作品と遺稿』


 晩年を柏市で過ごし野田市の老人ホームで息を引き取った孤高の画家、高島野十郎(本名・高嶋弥寿、一八九〇―一九七五)の代表作を集めた『高島野十郎画集―作品と遺稿』(B5判、二四八ページ、五〇四〇円)が求龍堂から出版された。

 野十郎は福岡県久留米市出身で、東京に住み、個展を中心に発表。画集は、野十郎が八十五歳で亡くなるまで晩年の二十年余り交友が続き、親身の支援者でもあった川崎浹・早稲田大学名誉教授と八〇年に開かれた「近代洋画と福岡」展の出品作「すいれんの池」との出合いをきっかけに学芸員として埋もれた画家の再調査、再評価を精力的に進めてきた西本匡伸さんが監修し、全画業の中から油彩画百二十九点を精選。最近、見つかった遺稿やデッサンも収録する。

 八六年の福岡県立美術館を皮切りに四回の回顧展が開かれ、その都度、展覧会図録が作製されたが、今では四冊すべてが絶版となり入手困難なことから新画集の公刊は野十郎ファンならずとも時宜にかない、この画家の仕事と思考の足跡を知る上でも画期的だ。

 オリジナルな光と色調の複製は画集の死活を制する要素。これまでの図録に掲載された図版は野十郎独自の練り上げられた細密描法のマチエールを再現するのにもう一つ行き届かないうらみがあったが、本画集は西本さんらが何度も色校正を重ねた成果か、満足のいく出来に仕上がった。

 油彩作品は野十郎の名を高めた「月/太陽」連作と「蝋燭」シリーズのそれぞれ鮮明な写真図版十点ずつが掲載され、見応えがある。それ以外は戦前の〈自画像〉四点を含む「一九一四―一九四三」までと戦後の「一九四五―一九七五」までの作品に大別され、風景、静物、人物のテーマに沿って紹介される。川崎名誉教授の「日誌から発見した野十郎」や西本さんの「その生としての画、あるいはその画としての生」と題した解説や年譜は作家理解の有力な手助けになる。

 二〇〇五年の『没後三十年 高島野十郎』展の図録に掲載された作品数は約百点で制作年未詳が半数以上を占めるなど研究は緒についたばかり。作品の評価が高まることに歩調を合わせ新発見の作品目録が増え、将来カタログ・レゾネも作製されるだろうが、しばらくの間、本画集がその代役を果たすかもしれない。また、近く川崎名誉教授の本格的評伝も同じ出版社から刊行されるという。(文化部・河野良恒)


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