
日本の政治を含めて、社会に次々に難題が提起されている。今までの経験から高齢者が一言申し上げることこそ必要だと思う。
九島行正(くしま・こうせい)著『古希老人の雑記帳』は高齢者の独り言とはいうものの辛口も含め、文献にあたった学際的な好著と言える。内容は三部で、故郷の思い出、ふさの国、古希老人の随想から成っている。
最初は昔の思い出といえる「汽車」などの九項目で故郷は秋田県。中でも「鷹巣中学校3A古希の会」では幹事役の人たちは全員の名簿をつくり、昔の写真の拡大コピーを準備して、出席者の全員に配り、3A古希の会専用のバスで十和田湖、角館をまわって宿泊所へ。幹事が黒子に徹したサービスぶりが半世紀前のクラスメートの触れ合いを確かなものとしたことを行間ににじませる。
一方、鷹巣の災害の項で鷹巣の大火に「校長の二階堂善三先生は全生徒に火事の恐ろしさを教え、自作の短歌を紹介した。
東風吹かば 思い起こせよ 鷹巣の 大火の被害 永久に忘るな
後日、中学校の理科の先生が、東寄りの強風はフェーン現象であったことを教えてくれた。山から吹き降ろす強い風が乾燥しており燃え広がる原因になった」
ふさの国には、鹿野山、鋸山、富津岬、上総掘りの匠、水車の匠、旧道など九項目。工学博士だけに数値に注目し文章ははぎれ良く、多くの本を参考にし分かりやすく述べている。
木更津の地名については諸説を紹介し、「木更津市教育委員会HPによると『木更津』という地名を伝える古文書が少なく、茂原市の永興寺で見つかった文永十年(一二七三)六月十八日付けの奉籠願文に『きさらす』と書いてあるのが最も古いようだ」とある。...
(川名興・千葉県立中央博物館友の会顧問、東京湾学会理事)(近代文芸社・一五七五円)
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