戦争写真が広く世間に認知されたのはロバート・キャパのスペイン戦争における「崩れ落ちる兵士」(1936年撮影)あたりからだろう。あれから既に70余年。多くの戦場カメラマンが命をかけて、報じてきた戦争という人類最悪の大罪は地球上からなくなっていない。だから、この本の帯に記された「人間には、戦争の遺伝子『WAR DNA』が在る」のコピーに黙ってうなずき、中をしかと見る責任があるのだ。
世界の戦場での空爆、銃撃、破壊、流血、死体、滂沱(ぼうだ)、その繰り返し。この本には、あえて残酷なカットを収めている。「人類と常に密接な負の存在の戦争。その存在が現実であることを知ってもらいたい」とサカマキは言う。
戦争取材を始めたのは1991年の北アイルランド紛争から。以来、パレスチナやハイチ、スリランカなど戦場を駆け巡った。望遠レンズに頼らず、短玉で戦禍を激写。ゆえにイスラエル・パレスチナの取材では流れ弾を左腕に受け全治1カ月のけがを負った。マスコミ報道を通じて、これらの紛争地域とある程度の情報を知っている人は少なくないはずだ。だが、それは事実のほんの一片にすぎない。
最も印象に残ったのは表紙にしたスリランカ内戦のカット。多くの棺越しに遺族の影が重なる。深い悲しみの中に、不気味な怨嗟の炎が揺らいでいるように記者には見える。血で血を洗う抗争。まがまがしい輪廻転生。この地球上から復讐の連鎖を断ち切れないのか―。サカマキの写真は必死に叫んでいるのだ。
平和ぼけした日本も対岸の火事ではない。今から63年前の1945年夏、終末兵器の原爆が投下され、焦土と化した。記録が伝える戦争の事実は多く、この本もその1冊であり、人は愚行を痛感するだろう。当時の気象台記録で終戦の8月15日、東京・大手町の正午の気温は30・9度、湿度は64%だった。蒸した夏。今年もまた終戦記念日を迎える。(文化部 安原 直樹)
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