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写真集の狩人

代表作200点で神秘の世界へ 「昆虫 4億年の旅」 今森 光彦写真集 (新潮社・3600円)


 昆虫が表情豊かだとは知らなかった。この本には見入ってしまう約200点の代表作が並んでいる。写真家の学生時代から最近までのフィールドワーク、子どものまなざしのような熱い好奇心の結晶だ。子どもたちの夏休みも終盤。この本を参考に虫かごと網を持って、地球上に4億年前、現れた昆虫の神秘の世界をのぞきに行こう!

 本は2部構成。前半が「世界昆虫記」、後半は写真家がフィールドにしている琵琶湖周辺で撮影した「昆虫記」。導入部の色鮮やかな姿形の虫たちで興味を喚起し、国内のそれへとつなぎ、巻末の資料編に誘う流れには、写真家もアイデアを出したという見せ方のうまさが感じられる。

 写真は、羽化や捕食、飛翔、発光などの決定的瞬間をとらえている。気付かないうちに虫の目線になっている。カメラとの間に不自然な空気がないためだ。「撮影距離が5センチほどのこともある」と説明するが、対象は逃げない。それを可能とするのは長年の研究で、“虫の思い”を読み取れるからなのか。冷静な観察眼があればこそ、ひげの動きを時計の長短針に見立てたユニークな連作「バッタのひげ時計」などを生み出すのだろう。「わずか10分のうちに撮影した」と言うからまさに神業だ。

 今森の名前を記者が知ったのは写真集「里山物語」(新潮社、95年)との出合いだった。自然保護というと大仰に構え、世界遺産などに目が行きがちだか、この本によって身近な自然の尊さを知った。以降、「SATOYAMA」という言葉は世界中に瞬く間に浸透していった。

 「昆虫は百貨店で買う」と思い違いしている子どもが多い。命はこぎれいな箱に入って、値札がつけられるものではない。さあ身近な里山に行こう! 「何度も通えば、次第に環境を把握し、昆虫に出合えるチャンスが増える」と写真家はアドバイス。そして目線を下げることで、今の格差社会と同様に大切なものが見えてくる。(文化部 安原 直樹)


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