ほのぼのとした独特の作風は、今年93歳になった父方の祖父から受け継いだ遺伝子にあったのか―。殺伐とした現代に、プッと吹き出してしまう笑いの瞬間を提供してきた写真家。大ヒットの「うめめ」「男子」に続く第3弾では、お茶目な? じいちゃんさまを真ん中にでんと据えた家族3世代のポートレートを披露した。「またやってくれたかよ(佳代)」と叫びたくなる“快心”の作だ。
この本は1998年、写真家が17歳から、祖父が83歳から現在まで10年間の日常スナップを収める。「じいちゃん」「かよ」と呼び合うほんわかとした関係に過剰演出はない。いい具合に力が抜けている。身内の撮影はテレが邪魔して意外と難しいが、気取らない脱力系の作品群に感嘆してしまう。
石川県能登町の自慢の家(ふすまを外すと100畳にも)、庭、田んぼと、祖父の日常の行動範囲は極端に狭い。だが全くパーソナルな視点が作品に抑揚をつけている。食事や農作業、孫たちとの戯れ、3世代の集合写真、さらにバナナをつるんとした頭にのせたサービスカットなど、一家団欒をのぞき見している気分になる。敬礼風に右手を上げる祖父の得意ポーズが目立つ。この「はいっ」と言った瞬間をカメラは逃さない。無際限の愛が放出している。また作品に添えた口語体のキャプションが、どこまでも自然でいい。
高校卒業まで梅は祖父母と両親、弟妹の一家7人で暮らしていた。東京に活躍の場を移した今、盆暮れの帰省の時しか会えない。一部の作品に入った年月日でそれが分かる。一抹のさびしさも伝わってくる。
出版の動機について、梅は二重瞼の目を一層クリっとさせて、「じいちゃんにもっと生きてほしい。その姿を見て、多くの人に長生きの格好良さを知ってもらいたい」と話した。白寿(99歳)を超えてその先どこまでも、と願いを込めたシャッターが1枚でも多く切られるといい。いつも肩から斜めにかけた愛機キヤノンEOS5で―。(文化部 安原 直樹)
mixiチェック