いつかは極寒のアラスカへという思いがあってオーロラの写真集を数見てきたが、本書は傑作の一つだろう。夜間のオーロラ撮影は高感度フィルム+長時間露光の結果、画質の低下は否めない。しかし、このB4フルサイズの大判には、太陽と地球が織りなす神秘の光が鮮明にプリントされている。オーロラの名前の由来となったローマ神話の女神が天空に舞い降りた、まさに瞬間を見る。
金本は94年、極北の地に初めて立った。不惑を前にした年だったが、地球原初の風景の虜となり、この時点で被写体に対する惑いは消えた。以来、年2回のペースで足を運び、レンタカーを駆って全域を巡っている。この本は、夕方から夜明けにかけてのアラスカの表情を抜粋している。
満月の夜。時刻は午後11時~午前2時。気温は息も凍るマイナス20~30度。金本が天空を見上げる。その時、グリーンの光の矢が放射された。「ブレークアップ(オーロラ爆発)」。予測不能の事態に1人の孤独も、恐怖も、寒さもすべてを忘れ、金本は冷静な記録者になっていた。
しかし、写真は単純な記録ではない。芸術品に昇華している。それは、変幻自在のオーロラを狙った構図に寸分の狂いもなく配置しているからだ。例えば、冠雪のマッキンリー山、麓を流れる大河、満天の星の大舞台に、音もなく舞うオーロラを絡めた写真は奇跡のカット。むろん一切の脚色はない。金本は「体力の限界を超えた時、大自然はドラマを見せてくれる」と話した。光の帯は時にカーテンへ、時に大波へと姿を変え、グリーンの中にある豊かな諧調も目を楽しませてくれる。
「オーロラ」(上出洋介著、山と渓谷社)の序文には「オーロラは、太陽から地球人への壮大なメッセージ」とある。その貴重な伝言は私たちに届いているのか―。生命の存在さえ脅かす異常気象が進行する昨今、伝言の意味を考えさせられる。そして今年も聖夜を迎えられることに敬けんな気持ちになれる。(文化部 安原 直樹)
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