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写真集の狩人

草庵に心満たすブランド服 「着倒れ方丈記」 都築 響一写真集 (青幻舎・3200円+税)


 この写真家の企画力の秀抜さには、いつも感心させられる。雑誌編集者出身ゆえに時代を切り取るのがとてもうまい。東京人のリアルな生活を写した「TOKYO STYLE」、日本各地の珍妙な名(迷)所を撮影した「ROADSIDE JAPAN」など数々のヒット作を生み出してきたが、新作は有名ブランド服に焦点。ただしその当て方が都築ならではと、舌を巻くのだ。

 本書は、99年から約7年間、ファッション誌「流行通信」(現在休刊)に連載した企画を総集。写真家は「生活費を削ってでも洋服を買う『HAPPY VICTIMS』(幸せな犠牲者)のエネルギーに段々ひかれていった」と話し、口コミを頼りに足で取材先を探した。

 ご存じ方丈記は、鎌倉前期の歌人、鴨長明が日野外山の方丈(1丈=3メートル=四方)の庵で著した随筆。世の人と住居のはなかさを唱えた「行く河の流れは」の名文句で始まり、自由に生きることこそ閑居の楽しみなどと述べている。それから800年後のいま、同じ“すき者”の隠者生活があった。

 質素な、狭隘(きょうあい)な、孤独な一室が高級ブランドの服や鞄、靴などで埋め尽くされている。ある予備校講師はヴェルサーチ収集家。夫婦で暮らす1Kマンションには、服を収納した段ボールが両壁にぎっしりと積み上げられ、写真家の脳に強烈な印象を刻んだ。だがブランド側は服のイメージが壊れるとし、この種のマニアを嫌忌する。

 しかし、彼らはブランドがもたらす快楽に恍惚(こうこつ)の表情を浮かべ、切ない片思いを募らせる。侘び住まいで仏道と芸道三昧(ざんまい)に明け暮れた長明の人生&処世観と響きあう。品物を金銭換算すれば相当な額になるが、俗物の損得勘定を高見から見下す。つまり彼らは、精神的な心の充足に遊んでいるのだ。長明は結局、悟り切れなかったという学説がある。幸せな犠牲者は果たして…。この本はその過程を詳細に報告している。(文化部 安原 直樹)


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