• 文字サイズを変更
  • 小
  • 中
  • 大
写真集の狩人

はにかんだ笑みは彼だけに 「a girl like you君になりたい。」佐内正史著(マガジンハウス・3800円+税)


 豪華な本である。こう書くと、紙質や装丁がと勘違いする読者もあろうが、むろん中身のことを言っているのだ。いまや人気、実力ともに揺るぎない女性芸能人(俳優、モデル)がまだ駆け出しの純真無垢(むく)な少女だったころ。限りなく素の表情としぐさが収められている。

 プロの写真家が女性を撮る場合、完ぺきな機材と照明を備えたスタジオが主舞台となる。すると、写されたカットは確かに普通の女の子を美神に変える。それはそれで雑誌の表紙や巻頭ページを華々しく飾るのだが、過剰演出で美化された虚像に飽きた私たちの目は強欲にも私生活の実像を覗(のぞ)き見たくなる。

 本書は雑誌の連載企画をニュープリントで編み直している。ほぼロケ撮影だろう。しかもロケ地が道端や商店街、空き地…よくて海辺とまったく気取りがない。そこに普段着の女の子40人が登場する。国民的な正当派女優宮﨑あおい、蒼井優、新進の日本映画に欠かせない実力派麻生久美子など出世組が居並ぶ一方で、高慢な言動でしばしば物議を醸す沢尻エリカ、薬物事件の堕天使小向美奈子と、ページを繰るたびに驚きを伴った新たな発見がある。このころの彼女たちはすべてダイヤの原石であって、内に秘めた輝きを少なからず放っているゆえだ。

 佐内正史の愛機といえば、中判のペンタックス67が有名。35ミリカメラの標準レンズに相当する90ミリをつけて何でも撮る。機材の制限が、被写体との心の距離も縮め、パーソナルな視像となる。不意に向けられたカメラに戸惑った直後のはにかんだ笑み。大好きな彼だけに見せるとっておきの表情だ。真昼の強い日差し、極端に傾いた画面、被写体ブレはポートレート撮影のタブーだが、自由気ままなチョイスが恋人気分をつくる。芝居を感じさせない自然な演出が、佐内の腕なのだ。ボーイフレンドになりきった渋谷直角の文も助力する。出会い、嫉妬(しっと)、けんか、甘酸っぱいハッピーエンド。ガールフレンドの撮り方の指南書でもある。(文化部 安原直樹)


mixiチェック このエントリーをはてなブックマークに追加
県内ニュースの記事全文は紙面をご覧ください。千葉日報を購読する

当ホームページの記事、画像などの無断転載を禁じます。すべての著作権は千葉日報社および情報提供者に帰属します。

Copyright (c) CHIBA NIPPO CO.,LTD. All rights reserved.