まずタイトルにギョッとする。司法関係者向けの専門書かと思えば、実は著者が編集長を務めたファッション誌の連載記事をまとめた本だった。高価なブランド服を身にまとった一流芸能人(主に女優)たちが、死体に扮(ふん)しているのである。あまりにもショッキングな洋服の見せ方が話題を呼び、「最後に見た風景」(美術出版社)などの続編も刊行された。
人は誰でも必ず死ぬ。だとしたら、「どういう最期を迎えたいか?」という問いに、俳優たちが自身の理想の死を演じたのだ。生の喜びを飾る洋服と、彼岸にある死を組み合わせたアイデアが素晴らしい。死にざまは芸能人らしいユーモアにあふれ、この本は凝りに凝った末期のシーンを見せていく。実に斬新な画面だ。
アカデミー外国語映画賞作「おくりびと」に主演した本木雅弘も登場。オフィスの大きな窓を背に、彼がイスに縛りつけられている。右手には虫眼鏡。その太陽光の焦点は右目に定まっており、焼身自殺したという設定なのだろう。私たちでは想像も及ばない演出方法が、のちのオスカーの実力の片鱗(へんりん)をのぞかせる。
経験に裏打ちされた高度なテクニック。照明やフィルター効果により、あえて青みがかった肌の質感をつくることで、写真家が“助演”している。撮影当時、伊島は「『新美人論』がテーマで、既成の美意識に風穴をあけるというのが狙い」(「写真家になる!」より)としており、有言を実行。役者の名演をファッション芸術写真に昇華したのである。
表紙にした見開きの横長写真は鬱蒼(うっそう)とした富士山麓の青木ケ原樹海。森閑の風景のどこかに古ぼけた皮のトランクに納まった小泉今日子がいるのだが、一見して分からない。その見事な化けぶりを目で探すのが楽しい。
初版発行から10年たった現在、本書はネット古書店で定価の3~8倍の高値がつけられており、市場が写真史に残す1冊と静かに訴えているのだ。(文化部 安原直樹)
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