技芸に一心に打ち込む若き男たちの美学を見る。アーティストの思いを鏡のように反映する和太鼓と写真。その道具のバチとカメラを手にした男と男がモノクロームの世界で、今ここに格闘す。
太鼓を中心とした古典邦楽を現代に再創造する集団「鼓童」(81年結成)。岡本が存在を知ったのは篠山紀信の助手時代だった。約5年の研さん後、独立した07年7月の終わり、彼らの修業の地・佐渡島(新潟県)の僻村に飛んだ。「密かな稽古(けいこ)」を撮るためだ。あえて撮影は4日の短期に制約。“異種格闘”の緊張を損なわないゆえである。本書は鼓童の演出を手掛ける坂東玉三郎のお眼鏡にかなった20代の6人を被写体にしている。
巻頭は佐渡島のロングショット。彼の地が隔絶の島という説明から入り、カメラはミドル、アップと画角を変えて奏者の肉体に迫る。身体の部位を細密描写していく。昏黒の闇に浮き立つさらしのふんどし姿。大太鼓の真正面に構え、全身全霊で連打する。密かな稽古-。口唱歌によって脈々と受け継がれた命の鼓動(音)、律動が大気を振るわす。飛び散る汗とともに男の切実な意志が伝わってくる。実に能動的であり、師譲りの激写だ。
打法から左右均等の背筋が隆々と発達している。太鼓を打つためだけに鍛えられた原始をイメージさせる筋肉。岡本は「限界に挑む姿が魅力」と話す。男性ヌードの系譜のエロスやホモセクシャルな世界を超越した神々しさ。刹那(せつな)的な肉体から打ち出される太鼓の音色は、強弱や打法で変わる。岡本はモノクロの単色に音の明暗と色彩を封じ込めたのだった。
見開きにした顔のアップがすさまじい。まさに鬼神の面貌。クワッと見開いた両目にらんらんとした光が宿る。焦点は大太鼓に結んでいるはずが、神の領域に届いているかのようだ。B4の大判型と行き届いた良質の紙、装丁が、ぞくりとする迫力を生む。その気にのまれ、記者は本書の上出来にドンと太鼓判を捺(お)していた。(文化部 安原直樹)
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