日報俳壇 山中葛子選
千葉市 笹沼郁夫
葭切の声をかぎりに妻を呼ぶ
【評】ヨシキリは、「ギョウギョウシ」と、かしましく鳴くので「行々子(ぎょうぎょうし)の名もある。川岸などのヨシ原に生息し一夫多妻の繁殖をすることでも知られている。繁殖期はことのほかにぎやかなのだ。ありったけの声をふりしぼって雌鳥を呼んでいる叫びは、もちろん切々とした妻恋い表現そのものだ。生きものの本能が熱っぽくたくましい。
千葉市 松室三慈
黙々と機械が歩む田植えかな
【評】もともと村の共同作業であり、神事であった田植作業は、機械化が始まって、早乙女や田植歌の情緒は完全に昔のものとなった。上海万博でロボットが日本の文明を象徴する時代に入ったともなればなおさらのことー。一面の水田を黙々と進んでいく田植機の進化は有りがたいものの、ふと早乙女の姿が恋しくなる田植の季節なのだ。
日報柳壇 平井吾風選
茂原市 福田研治
ワクチンを打った子牛が元気すぎ
【評】口蹄(こうてい)疫という病気が牛や豚たちを恐怖に突き落としている。もちろん、それを糧としている畜産農家にとっては大打撃だが、作者はあえて子牛という動物の立場へ目を向けた。事の重大さも知る由はない牛たちへ別の運命が課せられる中で、無邪気にも元気で走り回る子牛たち。その先が見えている生産者の目からは身を切られる思いだったろう。原句は全部を言わずして「元気すぎ」というフレーズに感情を集約し、涙さえ誘う逸句である。川柳は難しく表現することではなく、さり気なさの中に思いが感じられるものが名句だ。
野田市 川島一行
贅沢は有精卵のタマゴ掛け
【評】私も大のタマゴ好きなので、私なりに味の違いも多少は知っているつもり。昔ながらに育てた鶏卵の自然な味は余計な調理をするよりも何もしないこの卵かけご飯に尽きる…。作者と意見が合ったようなうれしいぜいたくさが分かる。無駄のないまとめが良い。
日報歌壇 大島史洋選
君津市 豊蔵欣治
出ましたかと寺の住職籠覗く小さいですよと竹の子見せる
【評】愉快な歌。長い付き合いなのでしょう。ふたりのやりとりの様子が目に見えるようです。
いすみ市 佐藤幸子
しみじみと足裏を見るさびしさは潜んでおりぬ深き形に
【評】足の裏をしみじみと見ながら、自分のさびしい気持ちのありようを考えている作者です。
日報詩壇 中谷順子選
網繰(あぐり)いわし船
銚子市 網中通
北に親潮黒潮南
二つぶすかる犬吠沖に
銚子の浜では鰯がとれる
漁場盛衰古今はあるが
親子三代網繰の船に
船の紋章四国土佐丸に
坂東太郎引き潮早い
銚子川口てんでんしのぎ
今は運河でなくなるけれど
波崎銚子の網繰漁船
利根の川口丁字回頭
勇壮絵巻の戦前うかぶ
追うぜ鰯を犬吠沖に
千に一人の大船頭
網を流して絶妙さばき
若い漁師の腕見せ所
船の崖ぷち一尺あれば
飛んで走って網をば引くぜ
はねる鰯がナイロン網に
船はいい足かえりの港
大魚旗に輝く夕日
幼馴染のウオッセ娘夕日あの娘はどちらが燃える
きいて見ようか船の旗竿に
【評】地元ならではの方言も用い、甚句のように腹の底に響く勇ましさ。跳ねる鰯が目に見えるようです。
日報学生歌壇 下平武治選
野田市 内山和夫
時代劇朝から晩まで見続ける寝たきり祖父の楽しみにして
【評】年を取ると時代劇が好きになってくるのか多くの老人について同じことをよく聞く。作者のお祖父さんも例に洩れず一日中時代劇を見ているという。寝たきり老人の楽しみの一つとして。気持ちの通じる歌です。
市川市 鹿内久美子
イライラの原因探し見つけ出す一番の敵は自分自身で
【評】いらいらしている自分に気づきその原因を探したところ、それは自分自身にあったと理解した作者。きっとこの後作者は自分に打ち勝つことができたでしょう。
■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。メールでの投稿は受け付けておりません。
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