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読者文芸

2010年6月13日


日報俳壇 山中葛子選

勝浦市 斎藤芳惠
春灯の一つを残し一人の夜
 【評】作者には、<春愁や机上に亡夫の釣り図鑑><山桜遠くに置いて畑仕事>など、夫を偲ぶ句がたくさんある。釣りを楽しんでいたであろう「釣り図鑑」がそのまま机に置かれている部屋の様子。「畑仕事」の日々など。在りし日の夫が眩(まぶ)しくよみがえっている慕情のあざやかさ-。つややかな「春灯(しゅんとう)」に包まれた、一人っきりの夜なのだ。

千葉市 黒川秀夫
のどけしや水面の富士に糸垂らし
 【評】まるで名画を眺めるような句だ。まだ雪をかぶっているであろう雄大な富士山がくっきりと映っている水面の静けさにちがいない。釣り糸を垂らしている釣り人の姿がくっきりと見えてくるではないか。水面の下には魚たちがいきいきと群れ合っているはずの別世界のような「のどけしや」-。はたして魚は釣れたのであろうか。

日報柳壇 平井吾風選

八街市 緑川安英
一枚の貼り紙で足る店仕舞い
 【評】本来なら店一軒でも畳むということは大変なことであり、貼り紙一枚で済む話ではない。想像するなら、もともと老夫婦だけで営んでいた小商いというところだったろうか…。わびしい思いだが不況な世間では「またここもか…」くらいのマンネリ感でしか見られない。作者の飄々(ひょうひょう)とした表現こそが、逆にやりきれなさを感じさせる裏を読ませる巧みさだ。

流山市 大竹洋
靴底にへばり付いてる棒グラフ
 【評】数字を追うことだけが仕事の営業マンには心の休まる時はなく、休日でも歩かねばならないだろう。着想としては他にもありがちだが、頭から離れない成績を対象の足に持っていく辺りが、表現として面白くまとまっている。

日報歌壇 大島史洋選

市原市 布施昌子
退職後余白ばかりの手帖持ち持たねばさみし開けることなし
 【評】私も退職して数年がたちます。この気持ち、よくわかります。結句がいいです。

大多喜町 鈴木政雄
幾千里こえて降りくる黄塵はかつて軍靴で踏みし土なり
 【評】中国からの黄砂に対する感慨。このように思う人も少なくなりました。

日報詩壇 中谷順子選

母の日に
鎌ケ谷市 笠井みち子
思い出す母の言葉-
いつだって人は
時代の狭間に生まれる
いつだって
時代の狭間を生きるのだ

無学な母は言う
地球は丸い遮るものはない
地球に注ぐ七光の光も
釜を磨き煮炊きするのも
狭間に生きてゆくお前の
心を熱くしたいだけ

無学な母は言う
明日という日は
誰のためにもあるのだと
いま口にしている水だって
ヒマラヤの雪だとも

お母さん今私はあなたと
沢山話したいことがある
 【評】ふとしたおり話してくれた意味深い考え。立派な母様でした。しみじみ思い出しながら心残りに思う揺れが最終二行に表現され、豊かな味わいをかもしています。

日報学生歌壇 下平武治選

船橋市 石田陽一
ふるさとを離れてたった一カ月母の食事のなつかしくなり
 【評】大学生活を送るために上京してきて一人暮らしを始めた作者。一カ月という短い期間だが、故郷のお母さんの作る料理が恋しくなったという。上京してきた多くの学生が同じように感じることでしょう。

千葉市 岡本拓海
手を空に伸ばしたならば届きそう霞む夕日と朱に染まる雲
 【評】夕日と夕焼け雲に手を伸ばしたら届きそうだという。下の句の表現がよく、夕焼けの情景が目に浮かんでくる歌です。肩肘を張ることなく素直に詠んでいるところがよいです。

■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。メールでの投稿は受け付けておりません。


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