日報俳壇 山中葛子選
千葉市 田中惠温
初日記ありふれしこと二三行
【評】新しい年を迎えて書きしるす「初日記」の一ページは、年頭の所感も書き添えたりと身がひきしまるもの。けれど、気が付くと年々同じような思いを確かめることにもなるようだ。それだけに「ありふれしこと」から、来し方行く末の深々とした人生観がゆったりと伝わって来る。自分史と向き合っていることの「二三行」が照らし出された妙味。
酒々井町 赤羽剛
爺々の鳩の出そうな冬帽子
【評】まるで手品師に出会えたようなうれしさだ。爺々(じいじい)という呼び方は何となく味わい深くしゃれている。ましてや今にも鳩がぱっと飛び出しそうな帽子を被った爺々ともなればなおさらのこと。冬帽子はソフトの中折帽子やモダンな鳥打帽子など、老いに向かっては暖かくてファッション性に富み、しかも帽子には気持ちが安らぐ文化もあったのだ。
日報柳壇 平井吾風選
茂原市 福田研治
世界へと舞台を回すソイソース
【評】ソイソースは大豆で作ったソースという意味で日本の醤油(しょうゆ)の事だが、今や海外にも広がり、その発酵食品のヘルシーさが世界に認められている優れ物だ。和食ばかりではなく洋風の隠し味としても良いとか。着想としては地味だが、中七の表現がいかにもステージに上がるという事へのつながりがうまく生かされている。
八街市 小川桃紅
身の丈を歩いて丸い息をする
【評】自分に合った生活で見栄(え)も張らず背伸びしない事への生き方がどんなに楽か「丸い息…」の一言に強調されていて全体のさりげなく語られている表現に、逆に深みを覚える。
日報歌壇 大島史洋選
柏市 松井とくよ
話せざる何かかかえて来し人の後の便りを真夜に読み居つ
【評】何か悩みをかかえているらしい人への思いがうたわれています。その人から来た手紙を読んでいると表現したところなど、とても良いと思いました。
千葉市 佐藤敬子
朝まだき母の半纏身にまとえば母のかおりと囲炉裏のにおい
【評】亡くなったお母さんの半纏。いろんな思い出が、匂いの中にこもっていることと思います。
日報詩壇 中谷順子選
晩年の美しさ
茂原市 中山操
駅前から果てしなく
伸びるいちょう並木
かつては大木の一部として
成長に尽くした葉
今役割を果たし
遠い遠い旅路へ
色づく葉が微風に揺れ
ひらりひらりと
空吹く風のメロディーに
乗って宙に舞い踊る
何と潔いことか
立派な仕事をした後の
あの大胆さ
寂しさなどない
いつしかあたり一面が
黄色の絨毯に
しばしの間足が止まる
初冬の夕暮れよ
【評】役割を果たしたあとの美しさ。「寂しさなどない」にジンときました。黄金の銀杏のように潔くと思う詩人の姿に感動します。
日報学生歌壇 下平武治選
柏市 鈴木のどか
楽しかった大学生活もう終わる授業一割飲み会九割
【評】卒業を間近に控えての感慨。大学生活は本当に楽しかったのでしょう。それにしてもその楽しさの一割が授業で、九割が飲み会だというのにはちょっと首を傾げたくなりますが、素直な表現で良いでしょう。
柏市 中島弘喜
レポートに終われる日々はあと少し四月からは仕事に終われる
【評】この歌も卒業を間近に控えての感慨。社会に出れば学生時代ほどレポートに終われることはないでしょう。就職難の昨今、仕事に追われるようになることは喜ばしいことです。
■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。
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