日報俳壇 山中葛子選
銚子市 田原秀水
むらさきの風に吹かれて菰の花
【評】夏から秋にかけて花の穂を伸ばしイネの花に似たマコモの花は、沼辺や川べりでよく見られる親しさだ。ちらちらそよぐ小さな花が「むらさきの風」になっているような何ともいえない風情は、万葉の時代から知られている植物のはるけさであろうか。古くにこの葉で編んだ敷物を「菰(こも)」といった由来などが思われてくる味わい深さである。
大多喜町 鋤柄直紀
十日分の日記をしるす夜長かな
【評】日記帳は日々の出来事やそれにまつわる感情などをごく個人的に記すだけに、鍵のかかるものまでも売られている。作者は何かの都合で日記を記すことなく過ぎてしまったようだ。それも十日分ともなれば、おそらく記憶をたどりながらの冷静さが記されていることでしょう。安らぎを取り戻している充実した「夜長」なのだ。
日報柳壇 平井吾風選
袖ケ浦市 石井重雄
生前に呉れりゃ好いのに栄誉賞
【評】国民栄誉賞は現役で頂く人も没後に贈られる人も居るが森繁久弥さんは大変御高齢にもなっておられたし、九十三歳の作者の言われる通り、もう少し早くお元気なうちに差し上げられたなら…ご本人の感想も伺えただろう。
君津市 雨宮彩織
カレンダー埋める予定は医者ばかり
【評】今年のカレンダーも残り数日で終わろうとしている。外出の予定表が医者通いばかりだとしたら寂しいことだと思うが、作者の頭の中ではそれすらもジョークでまとめてしまう明るさが楽しくて、まさに川柳だ。
日報歌壇 大島史洋選
いすみ市 目良やす
久々に亡き姉の家訪いゆけばまだ居る如く姉の革ぐつ
【評】亡き姉の家を訪ねたところ、玄関には姉の革靴が昔のままに置かれていて、まるで姉がまだ生きているかのような気がしたというのです。
市原市 若松三重子
子も孫もいないけれども運動会地域リレーに応援をする
【評】作者は八十六歳。活き活きと運動会を楽しんでいる様子がうたわれています。
日報詩壇 中谷順子選
月は流れず
八街市 江畑隆博
ああ、今宵の風は清らかに
水面を渡り、月影は波間に
浮かぶ我らの心を映し出す
櫓を漕ぐ体をしばし休め時の流れを振り返る
船板に寝そべり、澄み渡る
夜空の星を無心に見上げ
秋の冷気を深く吸い込む
岸辺では時が緩やかに流れ
いまだ虫の音が微かに届く
神の御手に導かれ、どんな
苦難にも耐え生き抜いた
祖先の誇りに我思いを馳せ
ただひたすら感慨にふける
頭を垂れ神の御加護に謝す
再び櫓を握りひとり呟く
水清く、流れは急なれども
川面の月は今も流れずと
【評】漢詩的文体を用いることで、月影映る川面で櫓を漕ぐ男の瞑想の深さを導き出しています。ゆったりした流れは利根川でしょうか。身の引き締まる美しさです。
日報学生歌壇 下平武治選
流山市 大水啓史
お諏訪様清めの水の冷たさに朝の緩んだ気が引きしまる
【評】朝早く近くの諏訪神社にお参りに行ったのでしょう。その祈りの清めの水の冷たさに身も心も引き締まったという。すっきりと表現された歌です。
習志野市 木村幸子
突風に庭の欅の赤き葉は渦巻き上がる地を這いながら
【評】突然吹いてきた強い風に、欅(ケヤキ)の落ち葉がぐるぐる回りながら地を這(は)っていたかと思うと突然空高く渦を巻いて舞い上がって行ったという。素直に表現された歌です。
■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。
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