日報俳壇 篠崎青童選
千葉市 佐野節
秋耕の兄に弟妹学半ば
【評】取り入れの済んだ田んぼを耕している長男を、私に置き換えてみた。戦後の農機具も発達しないころで、病床の父に代わって母を助けるために働いた。弟や妹は学業で手伝わせるわけにはいかなかった。高校三年くらいから学帽をかぶっての耕しで、すべては万能鍬(くわ)での作業であった。この作品から、六〇年前の私の姿を回想させてくれた。
富津市 土橋利貞
村中がふくらんでくる秋祭
【評】農村においてはやはり秋祭りが一番うれしい。特に豊年であった年は大収穫祭となる。昔は村を挙げての豊年祭りで、若者を中心に獅子舞も盛んであった。一と月くらいは毎晩、練習の笛太鼓が聞こえていた。娯楽の少ない農村では、招かれてのごちそうが最高の喜びであった。村中が豊かで膨らんでいたが、昔話になりつつある。
日報柳壇 平井吾風選
東金市 石田要
厚顔無恥駆込みをした天下り
【評】厚顔無恥とは厚かましく恥を知らないという事だが、天下りが禁止される直前に駆け込み天下りをするなどとは言語道断。全く憤りを感ずるのは私ばかりではないと思う。本来はずるい事に線引きは無く前も後も良くないものは良くない。だから政権交代にもなった事などの反省はみじんも無い。原句は四字熟語をうまく活用して省略をまとめた辺りが妙。
習志野市 山田剛生
ケータイの専用車両かと思う
【評】まさにケータイ時代。電車の中でも若者はもちろん、会社員風の大半もメールに気を取られている光景によく会う。原句の専用車両は多少オーバーでも言い切ってしまうウガチの面白さが川柳の妙味で楽しい。
日報歌壇 大島史洋選
千葉市 榎本よ志江
またくるねと子は帰り行く我もまた一年前まで夫に言いたり
【評】病院を見舞ってくれたお子さんの帰り際の言葉を聞きながら、自分も一年前までは夫にそう言っていたなと、感慨深く思い出している作者です。
いすみ市 佐藤幸子
ディケアに行く日はしっかり化粧をしにこにこ顔の八十六歳
【評】楽しげな様子が目に見えるようです。いくつになっても化粧は大切ですね、心の問題ですから。
日報詩壇 中谷順子選
無風の空に
松戸市 伊藤伸太朗
風よ!
どこへ行ったのだ!
烈風は死に絶え
なんともおびただしい
青カビの街だ!
無風の空に金蝿が舞い狂い
毒蛾が跳梁し
畑や荒地にマムシが
這い回り
路地にはムカデが
群れなしている。
僕らは風を
直立させねばならない
逆風をつかみ
突風を手なずけ
おのれ自身が荒々しく
吹く風になるのだ!
ひょーひょーとすすり泣く
寒風を叱咤し
すべてを吹き荒らすのだ
すれば大気が目覚め
鮮烈な風が
よみがえるに違いない!
【評】
「無風の空に」変革の風がテーマです。「風を直立させねばならない」の詩的表現に感動しました。言葉が精錬されていて実力ある詩人です。
日報学生歌壇 下平武治選
船橋市 盛山望
「ただいま」に返事の「お帰り」ほっとする心の中に沁み渡る声
【評】家に帰った時に家の中から「お帰り」と声が返ってくるとほっとするものです。一人暮らしの人が実家に帰った時などはなおのこと感じるでしょう。
流山市 玉置裕加
人の群れ携帯片手に右往左往ひそめた眉と風に舞う髪
【評】台風で電車が止まってしまった時の駅の様子でしょうか。大勢の人が携帯電話を手にして行ったり来たりしている様を冷静に見ている作者。下の句の表現がなかなかよいですね。
■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。
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