▼数年前、南越後の金城山を歩こうと上越線の六日町から登山口までタクシーに乗った。「お客さん、この暑い日にどこに行くんです」。大ざっぱに計画を説明すると「お客さん、60過ぎて元気ですねえ」
▼人の良さそうな運転手さんはルームミラーでちらりとこちらを見ながら盛んに話し掛けながら「若い、元気」を連発した。暑さも手伝い不快指数が上昇。「まだ50代だ、言われなくても若いよ」。少々声を荒らげると「すみません」。照れ隠しに笑った顔がミラーに映った
▼髪が白いから、そう見えたのだろう。親譲りで30歳になると前髪に白いものが交じりだした。運転手さんに悪気のないことは分かっていたが、その時はなぜか腹が立った
▼話は飛ぶが先日、仕事を終えて本千葉駅から電車に乗ると「座って下さい」。高校生の男の子が立って席を譲ってくれた。高齢者に見えたに違いない。遠慮しては彼の厚意を無にする。「ありがとう」と座らせてもらった
▼若者の乗車マナーに批判が多い昨今だけに、その子の親切が何より新鮮に感じられた。その半面「年を取ったのかな」とちょっぴりさみしさを感じたのも正直なところだ
▼「青春とは人生のある期間を言うのではなく、心の様相を言う-年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる」。ふと、詩人サムエル・ウルマンの『青春』を思いだした。