▼先端技術を駆使した演出が、美術鑑賞をめぐる環境を様変わりさせている。長寿命で省エネ効果が高く、細部まで照らし出すLED(発光ダイオード)。美術館で相次いで採用され、その効果が多くの観客を魅了しているようだ
▼昨年10月、装い新たに開館した山種美術館(東京・広尾)もその一つ。開催中の「江戸絵画への視線」展は、琳派をはじめ、土佐派や狩野派などの優品が並ぶ。照明の工夫で美しく際立たせた展示が目を引いた
▼同館は近・現代日本画コレクションで有名だが、江戸絵画も多く含まれていることはあまり知られていない。所蔵品の岩佐又兵衛「官女観菊図」の重要文化財指定を記念し、約20年ぶりのまとまった公開となった
▼酒井抱一「秋草鶉(うずら)図」(重要美術品)は、半月が出たススキの原で鶉の群れが遊ぶ二曲半双の華やかな金屏風(びょうぶ)。上からは月明かりをイメージし、下からはろうそくの光に近づけて調整したLED照明で浮かび上がらせたという
▼そもそも江戸期には上からの人工照明はなく、ろうそくの灯や反射光のもとで作品を見ていた時代だった。展示は当時の鑑賞空間の再現でもあり、わたしたちにとって新鮮な感動を誘う
▼伝統と格式の一方で進む美術館の新機軸。照明の仕方次第でまったく違う印象になることに改めて驚く。作品との対話の仕方が大きく変わってくるのだろうか。